74 ロゼッタの岩戸
(リサが全部言えないのは、リサが何かのルールに縛られているからだ。その点はマッテオさんと同じで、今俺達がやってるミッション、マッテオさんの娘を救えっていうミッションにおいてプレイする側とプレイされる側の立ち位置の違いってやつが、リサの教えられない範囲に触れているって事だろう)
「ローズはやっぱりローズなの、そしてうさぎはやっぱり、煮ても焼いても食えないうさぎなの」
「どういう事だいっ! 煮ても焼いてもって」
「ロゼッタ姉様は、この奥の大きな一枚岩の扉の中に隠れているの。リサが呼んだら扉を開けてくれるの、リサ……もう着くと思うな」
リサがそう言った途端に目の前が岩壁になって、そこでお堂の通路は行き止まりになった。
「げっ、やっぱ俺のせいだった」
「イメージ出来たん?」
「うん、ラヴィちゃんのおかげで……」
「リサのおかげってちゃんと言えないうさぎ、哀れな黒うさぎ、はぁ……ローズもリサも大変ねっ」
「ぐぅっ、何も言えねえっ」
(モフモフさんの頭の中は、リサに隠し事が出来ないみたいだ。エッチな妄想が多い俺で無くて本当に良かった!)
そんな心配をしながら見上げた岩壁は、目の前にこれまた厚くて重そうな一枚岩の扉が据え付けられている。この扉の向こうにロゼッタ姉さんは居るってわけか。
「こりゃまた大袈裟な扉だなっ、ここに来るのは俺も初めてだ。中はどうなってるんだろう? ロゼッタは大変だって聞いてはいたけど、そもそもこの中に入るのが困難って事か」
目の前にそびえ立つ絶壁、人の手によって表面を綺麗に削られたような岩壁を見上げてマッテオさんが言った。
「んっ? そういえばマッテオさん、何で初めてなの。最初から何か引っかかっていたんだけど、今頃思い出したよ。あのさぁマッテオさん」
「なんだ? ラヴィちゃん」
「えっと、マッテオさんが凶行に及んで……それから俺と出会った街の一角、あそこまではこの道を通って帰って来た訳じゃ無いの?」
「違うんだ、というか実はどこを通ったかって言う記憶が全然無い。本当、役に立てなくてすまねぇな、ラヴィちゃん」
「あららら、やっぱり。いやいや、マッテオさん、そんな気にしないで下さい」
(通路の長さすら変化するんだぞ、だったらロゼッタと会ったら次がゴールってぐらいに、こっちが決めたり思い込んだりすれば、そうなったりしそうだよな)
「ローズ、覚悟してね。ロゼッタ姉様はリサのお姉様なの、そして物凄い人見知りなの、恥ずかしがり屋さんなの、だから誰とも会いたくないの、ローズをリサは信じてるから……あっ、うさぎはしゃしゃり出なくていいから、むしろ後ろで縮こまって小さくなっている方がいいわ。でないとロゼッタ姉様がうさぎのシチューを食べたくなるかもしれないから、そうなったらうさぎはシチューになるしかないから……」
モフモフうさぎは、花の回廊で倒したリサがうさぎをシチューにしてロゼッタの所へ持って行くと言っていた事を思い出して、なんとなくマッテオの後ろに移動した。
この時モフモフうさぎが考えていたのは、無。無の境地、考えたら負け。頭を空っぽにして余計な事を考えないようにと……つまり雑念に囚われていたわけで。
モフモフうさぎの様子を見ながら、リサが岩壁の扉の前に立った。