73 ロゼッタに辿り着かない理由
片方では、マッテオ小劇場開催中……
「リサね、やっぱりローズ達とは違ってるの。でもね、ローズはリサを信じるの、ローズはリサを信じていいの。リサはローズに信じて貰いたいの」
リサが俺と組んだ手にギュッと力を込めて来る。
「俺って、男だったり女だったりして変な奴だし、性格が凄くいいわけでも無いし、頭がいいわけでも無いし、俺の事を色々知ったらリサは幻滅するかもしれないし。でもそれを隠さずに、俺が全部さらけ出してもリサは受け止めてくれるのかな……」
「はい」
(はいって即答! ! どうしてそこだけ 『はい』 になるんだ)
「ローズはリサと約束したもん、ローズはリサの事を守るって言った。だからリサはローズに守られてあげるの。それが決まりなの、ローズがリサを大事にするのは既定路線なの、大事にされるリサはローズの事を全部知るから隠しごとは駄目なの。わかった?」
「はい」
(重い、大変だ、何を言われたんだ俺は? 俺も 『はい』なんて言ってるし。えっと、なんだこの展開。よく説明出来ないし、なんだろ)
モフモフさんが親指を立てて、"グー" をしている。
(意味がわからん)
⁂モフモフうさぎから、DMが届きました⁂
ポワンと、俺の前の視界に薄っすら文字が浮かび上がった。クリックすると内容が表示された。
⁂彼女、彼女、それってリサが自分はラヴィちゃんの彼女だって言ってんの! 鈍感だねぇ、わかったか、この色男め、だははははっ、おめでとうーー俺じゃ無くて良かった⁂
(えぇ?)
「うるさい、うるさいっ、う、うさぎっ黒うさぎ。お前の体にはリサの糸が沢山入っているからお前の話は筒抜けなのよ。リサだってうさぎはお断りなの、おしゃべりうさぎっ」
リサが、俺から離れて早足で先頭に立った。何かを言おうとしたモフモフさんを、歩きながら振り返ってキッとリサが睨みつける。
(クククッ、たぶんまた余計な事を言おうとしてリサにバレたんだろう。どっちかと言うとそっちの方が大変じゃん。考えてることが筒抜けなんて、やっべぇし……残念だったなモフモフさん、ププッ)
「ところでリサ、ロゼッタ姉さんのとこにはまだ着かないの?」
あんまりにも同じお堂の景色、延々と歩き続けている。
「なあ、リサ、どうなん……」
「ローズ、リサはロゼッタ姉様の所に着いたら呼んであげるの。でも、ロゼッタ姉様の所に着かないのはリサのせいではないの、ちゃんと言えないけど、着かない理由をローズはもう知っているの」
「……」
(着かない理由って、もう知っている? よく考えろっ)
「俺はさ、なんかこの建物の中に入ったら襖があって、その襖を開けるとまた部屋があって襖を開けて、また部屋があって、襖を開けて……みたいなイメージだったんだけどな」
「モフモフさん、そんな事を考えてたの?」
「うん、まさかお堂の中に入ったらそのままずーっと歩き続けるなんて思わなかったけど、何せ異空間、それも有りだと納得してたんだ」
「で、その考えはリサに筒抜けってわけか」
「おいおいラヴィちゃん、その顔……もしかして俺が悪いみたいな事を思ってない?」
「モフモフさーん、ロゼッタ姉さんの居る場所はもうすぐだよ。ほらもう目の前に見えて来るってさ、しっかりイメージしてよっ」
(おめーのせいだよっ、もうえらい歩いたじゃねぇか。いい加減到着のイメージぐらいしやがれっつうの)
「うーん、そう言われると余計にイメージが湧かん」
「リサ、ロゼッタの居る所ってどんな感じなの? これは聞いていいの?」