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71 ゴールがコロコロ転がるって

「違うっ、俺が最初に見た時はこんな穴? は無かったぜ。ロビーちゃんが倒れているのは変わらないけど」


「いやいや、モフモフさん、この女の子ってロビーちゃんじゃなくてマッテオさんの娘さんなんだって……」


「えっ、何言ってんだ? ロビーちゃんだろ。だいたいマッテオさんって人間で、エルフじゃないし。んっ奥さんがエルフとか? 」


 俺たちがマッテオさんを見ると、


「うんそうだよ、俺の奥さんはエルフなんだ。肉屋のマッテオの店の看板娘。美人で気立てが良くて近所でも評判の……」


(何か違和感を感じてしまう)


 俺とモフモフさんというPC(プレイヤーキャラクター)と、ゲームの中のリサとマッテオさんというNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が複雑に絡み合う事で、次々と変化していく状況は、側から見れば一貫性のないご都合主義の塊であって、逐一変化する事象に対応していくには、変化する事が当然であるという考えを持つ必要があった。


 モフモフさんはロビーちゃんを助けに行っていたみたいだけど、俺達の登場で写真のロビーちゃんが、ロビーちゃんではなくなった。今回の変化は、モフモフさんがロビーちゃんだと思っていたエルフの女の子が、マッテオさんの娘に変わってしまった事。


「ラヴィちゃん、これどう見てもロビーちゃんだろ?」


 モフモフさんがいくら写真に写っているのがロビーちゃんだと言い張っても、この世界の住人であるマッテオさんやリサがこの写真の女の子をロビーと認めない限りは、この子はロビーにはなり得ない。


 モフモフさんの写真の女の子が、ロビーちゃんだという情報を共有していたリサとマッテオさんは、この世界にはもう居ない。今話をしているマッテオさんや、隣に居るリサは、俺が出会った2人な訳で、つまるところ俺が持って来た情報が優先された、または情報の上書きがされたという事だ。


「たしか写真の後ろに文字が書いてあったんだ。後ろ」


 そう言ってモフモフさんが写真の裏側を見せてくる。そこには確かに文字が書いてあった。


 《3人を助けるか、それとも見殺しにするかはお前次第だ》


 俺の写真の裏側もみてみる。


 《3人を助けるか、それとも見殺しにするかはお前次第だ》


 全く同じだった。


「3人になってる! こんな事は書いていなかったぞ。ラヴィちゃんのは最初からそう書いてあったのか?」


「いや〜、そもそも裏側を見てなかったし……」


「3人なんて写ってないわよ、リサには可哀想な縛られた血塗れのエルフの女の子しか見えないけれど、マッテオさん、この子の名前はなんて言うの?」


 リサがタイムリーな質問をぶつける。


(リサって本当は凄く頭の良い子じゃないのか? って気がして来た。俺は名前なんて聞いてもいなかった)


「ナギサ、娘のナギサだぁ。なんで俺はこんなことを……」


「はぁっ? マッテオさんがやったのか? 自分の娘を」


「なんだか操られていたらしいんだ。それに気がついたんで、俺達は急いで助けに向かっている所だったんだよ」


「うーん、ということはやっぱり2つの世界がくっついたみたいだな。ロビーちゃんの線はどうやら無くなって、この子がマッテオさんの娘のナギサちゃんって事に変わってしまったって事か……」


「そうそう、さすがモフモフさん。飲み込みが早い」


「ねえねえ、3人なんてどこに居るの?」


 俺の写真を手に取って、じっくり見ていたリサが首を傾げて言った。

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