69 寺のお堂はどこまでも奥が深くて
「リサ知ってる、リサの事、いたぶって、服を切り刻んで、無抵抗なリサを蹂躙したの、基本黒うさぎがやったの……」
「えっ? 俺っ」
「さあ、急ぐわよっ。マッテオさんの娘さんを救いに行くの、リサに続けなのよっ!」
(話について行けない……お話畑じゃ上手く噛み合ってたんだけど、基本リサはリサであって、我が道を行くのがリサであるって感じだな)
阿吽の2人の金剛力士像は、階段を降りた元々居た場所に戻って行った。体がデカすぎるので一緒に行く事が不可能だったからだ。別れ際にモフモフさんが加護がどうだとか言っていた。
ボロボロのモフモフさんと、隣を歩くリサ。
(よく見りゃリサって、スタイルが良くて着ているワンピースもベージュと白で統一されている上品な仕上がりで、ポニテに束ねたピンクのリボンが凄く似合っている、色白だし可愛いよな)
「モフモフさんっ、ちょっとちょっと」
「何? ラヴィちゃん」
「あのさ、俺達自然にこの流れに乗っかっているけどさ、俺ここに来るまでに色々あったんだ……というか、他の人ってログインしたら噴水の所ってネットに書いてあったよ。知ってる? 」
「えっ、何それっ? やっぱおかしいぜ。俺、絶対おかしいと思ってたんだ。だって、あっそう、そうだ、俺ここに来る前はドラゴンに食い殺されてリアルに気絶してたんだぜ。部屋でヨダレを垂らして床に倒れてたもん」
俺とモフモフさんの会話を黙って聞きながら歩くマッテオさんとリサ。寺のお堂の中に入った俺達は丸くて太い柱が左右に均等に並んだ通路を奥に進んでいる。
寺って仏像とかがバンって鎮座しているイメージだったのに、奥が見えない異空間が広がっていたわけで、話をしながら歩く時間がたくさんありそうだった。
「黒うさぎはドラゴンを怒らせたの? リサを怒らせたのと同じなの? だから食べられたの? たいして美味しくないのに……」
「おいっ」
モフモフさんが突っ込む。
「モフモフさんもここに来る前に、ログインしたの?」
「うん、朝10時きっかりにログインしたんだ、そしたらたしか、古代竜の信仰の谷だっけ、ヤバすぎるデカイ竜が出て来てガブッと喰われちまったんだ」
「うさぎは死んでも生き返る事が出来るなんて、リサはズルイと思うの。リサ達はそうじゃないのに」
考えさせられる事をズケズケと言ってくるリサの表情を、リサの方が俺の前を歩いているから見る事が出来なかった。マッテオさんはどう思っているんだろうと隣を見ると、話を聞いていないのか、初めて来た場所のようにキョロキョロしているマッテオさんが居た。
「ラヴィちゃんは何があったんだ?」
「あっ、俺、俺も朝10時にログインしたんだけどね、真っ暗な地下水路みたいな所にスポーンしたんだ。そして巨大スライムに食べられて、いや、包み込まれてしまって窒息死した」
「息が出来なくて苦しかった? ラヴィちゃん」
「うん、そんな気がした。けどなんだか胸が苦しいって感じだったかな。ヘッドギアを外してその後放置してたからね」
(そういやあの後、C.Cはどうなったんだろう? 逃げ切ったんだろうか、それともC.Cも……)