65 アナヴィオスィ(復活)
「まだ生きてるの、死んでいないの、大丈夫なの、リサが居るから大丈夫なの……でもでも」
リサがぱっと顔を上げて周りを見回した。
「居ないの、みんながいないの、だから力が足りないの……こんなになっちゃって駄目、駄目だよ……ローズ、ローズ……」
リサの両手の指先から銀色に光る細い糸が、モフモフうさぎの全身の傷口に触れて震えてる。モフモフうさぎの消えそうな温もりを感じているリサ、リサは彼の途切れかけの命を細い糸で繋ごうとしている。
⌘ この者に流れし命を我は再び結ぶアナヴィオスィ ⌘
目を閉じたラヴィアンローズの凛とした詠唱がリサの声に重なる。
(俺のちっぽけな願い事よ、叶うんだっ)
モフモフうさぎと、その側に座るリサを中心に金色の魔方陣が地面から浮かび上がった。魔方陣はモフモフうさぎ、そしてリサを光で包み込み3mほど上に移動するとスッと消えた。
リサの銀色の糸に金色が加わり少しだけ力が増した。
リサが弱った目でラヴィアンローズを見る、悲しい笑顔でリサは首を横に振った。
「リサ様、[阿][吽]がリサ様のみんなの代わりになりましょうぞ。今こそリサ様に寄り添わずして何の為の我等でありましょう。我等の力をお使い下され」
[阿]、[吽]は両手を、モフモフうさぎとリサに向けて力を込めた。彼等の大きな両手から閃光のような光がほとばしり、その光がリサに触れた瞬間、新たな力が流れ込んだリサの目が大きく開かれた。
「強い、強いの……阿、吽の力。ローズの願い、叶うから。リサ、黒うさぎを助けてあげれるの……この黒うさぎを」
何かを思い出したようなリサは、モフモフうさぎを再生していく。
「ローズ、黒うさぎの右手と左手が無いの。傷は塞げても、手を作ったりは出来ないかも……」
「リサ様、うさぎの右手は寺の前に、左手はあちらに」
[吽]が手をモフモフうさぎにかざしたまま、顔で斜めにあちらを指し示した。ちぎれた左手の先がそこにあり、寺の前には肩から先の右手が転がっていた。
「拾ってくるっ」
そう言うと、ラヴィアンローズはモフモフうさぎの手を拾いに駆け出した。
(黒うさぎって……リサはモフモフさんをさっきは知らないって感じだったのに、どうしてモフモフさんを黒うさぎって呼ぶんだ? モフモフさんはここに来る前にリサの花の回廊を通った? いや、でもそんな話はしなかったよな)
走りながらリサの変化が気になるラヴィアンローズは、自身が詠唱した魔法がそれすらおかしいという事に気がついていない。本当はヒールを唱えようとしたはずなのに……。
モフモフうさぎの右手も拾い終えると、ラヴィアンローズは拾った左右の手の重さの違いに戸惑う。
(どうしてこの手がモフモフうさぎの体から離れてしまったのだろう? なんでさっき仁王像に踏み潰されそうになっていたんだ? )
理由などわからないままに、リサの元へと戻る。
「ローズ、その手を繋げるように置いて。もっと身体にぴったりと……」
「待て、待てっ」
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アクティブスキル
ヒールlv.1 (使用MP20 効果HP+40)
聖の衣lv.1(使用MP30 効果 防御力を一時的に+15上げる)
アナヴィオスィ (使用MP MAX値から1を残し全てを消費する。MP値MAX限定使用、瀕死状態からの復活)
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