48 勘違いのマッテオ
(どうだ? ……繋がるか?)
GMスワンにフレンドチャットの申請をする。で、ポチったけど相手に届いたのかどうかの判断材料がシステムに無いみたいだ。繋がりませんとか、相手が居ませんとか、なんらかの理由が表示されればありがたいのだが、このゲームではそれが搭載されていないようだ。
(ここんとこ改良してもらいたいなぁ、覚えとこ。今度運営に報告しなければな)
フレンドの項目に、モフモフうさぎや白刃のロビー、C.Cと巴御前の名前もあるが、フレンドチャットの申請は全員に送る事が出来た。というか、送れたのが定かでは無い。
(フレンドチャットは役立たず決定!)
選択肢は2つだ。ログアウトして、運営にメールを送って返答が来るまでログインしない。もう1つは、この人の居なさそうな街並みを散策してみるって事。
俺はまずは右手の建物の前に進んで行くことにした。ログアウトなんてするつもりは無い、だってここには巨大なスライムなんていないだろうからね。
ガラス張りのショーウィンドウは、ピカピカに磨き上げられていて俺の姿が映っていた。
しげしげと俺は自分の姿を見てみる。腰の剣を手に取ってキメポーズをしてみたり、腕を組んで片手を顎に当てて悩んでいる風を装ってみたり、髪をかきあげる仕草を途中で止めてカッコイイか確認してみたり、そもそもの俺の顔がイケメンかどうかジッと見つめてみたり……
「かっこ良すぎて惚れちまうでしょっ、そんなに見つめたら」
ガラスに映った自分に、つい話しかけてみた。
「いやっ、それは……そうか〜? だが、あいにく俺は女の子しか無理で、惚れられてもちょっと困るなぁ」
「えっ?」
(誰だ? 男の声がしたっ!)
声がした方に振り返ると、そこには大きめの中華包丁みたいなのを持ったガタイの良いイケメンおじさんが立っていた。
「うわっ、マジ、イケメンのダンディがいらっしゃる」
俺がつい、ネカマモードで話しかけると
「いやー、噂には聞いていたが……例え男でも、こう真っ直ぐ言われると、気持ちが悪い訳では無いもんだなぁ」
自分をかっこいいと言われたと勘違いをしている男が、頭を掻きながら言った。
「俺は肉屋のマッテオ、こいつで肉を切ったりするのが仕事だ」
「あっ、はじめまして。あの、えーと、俺、いや、あたしはラヴィアンローズと申します」
「ガハハ、無理すんなよっ、ネカマのラヴィちゃん。あんたの事を聞いてるし、あんたに用事があってここに来たんだ」
「そ、そうなの。くそーもういいやっ、で、俺に用事って?」
「ああ、これ。これを渡しに来たんだ」