46 クエスト[花の回廊]終演
「目障りっ、なによっその剣。そんなナマクラでアタシの糸は切れませんから」
リサが花の回廊を塞ぐように作り上げた蜘蛛の巣の中央に降りてきて言った。
「試してみるか? 先ずは舞台を作らねばな……」
モフモフうさぎに憑依したライジングサンがふらりと倒れる様に動き出した。剣の振りが体の回転と共に勢いを増し、緑が飛び散り、そして赤い薔薇が切り刻まれて行く。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あぁぁぁぁ……やめてーーーーー」
蜘蛛の巣からリサが出した小さな悲鳴は、モフモフうさぎには届かなかった。
「聞けーーーー!」
悲しみのこもった悲鳴が放たれて、初めて剣舞が止まった。もはや花園とは言い難い刻まれた花々の残骸の上に立ってモフモフうさぎがリサを見る。
「お前は、あたしの大事な友達を、みんなをこんなに殺して……あんただって友達を助けるって言った……なのに、あんたはあたしのあたしの大事な友達を、みんなをこんなに殺して……あんただって友達を助けるって言った……なのに、あんたはあたしのあたしの大事な友達を、みんなをこんなに殺して……あんただって友達を助けるって言った」
「それが人の世、繰り返し行われてきた変わらぬ輪廻。たとえ生き永らえようともいつかは我が身、恨むなリサよ、せめて散った花びらと共にあの世で咲き誇れ」
何度も同じ事を繰り返して身体を震わすリサに向かって、モフモフうさぎに憑依したライジングサンが冷たく言い放った。茫然としたリサに向かって双剣を斜に構えて剣舞の挨拶を行う。それはまるであの世へ向かうリサへの惜別の礼。
【我が名はライジングサン、闇夜を照らす永久の光。そなたの暗く閉ざされた行く末を我が導こう……ドラコーンフォス】
双剣が放つ眩い光に包まれていくモフモフうさぎの周りに、激しい風が吹き荒れ風に乗った光の刃が竜巻のように全てを切り割き消していく。一瞬の風切りの轟音が通り過ぎた後には何も残らない。飛び散った花も、蜘蛛の巣も、リサも。
(周りの花、植物、みんな消えちまった。残りカスすらねえ……)
(全て、光塵と化した。案ずるな、これも自然の摂理)
モフモフうさぎには、最後までリサが言っていた仲間を失った悲しみの言葉が心の中で繰り返されていた。
(俺は友達のロビーちゃんを救いたい。リサは友達の花を救いたい。気持ちは同じだった、なんかやり切れないよな)
ライジングサンが、再びガントレットに姿を変えた。もうライジングサンから返事は無い。何も無くなってしまったリサの居た辺りを振り返って、
「ごめん」
そう言って、モフモフうさぎは花の回廊の先に進んで行った。