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85 蜂の大群のバリケード

 ◇


「見えたっ。急いでっラヴィ、真ん中の階段の前に広場があってそこで冒険者達とモンスターが戦っている。そこを通らないと階段には辿り着けない。ハル、お願い」


 イーニーが春天公主(ハルヒメ)の背に乗ると同時にハルが駆け出した。僕は走りながら緑を探す、植物さえあれば僕にも何か出来るんだ。そこかしこで冒険者達がモンスターと戦っている場所を駆け抜けて行く。かなり中心部に近づいた所で、蜂のようなモンスターの群れに落とされた雷の範囲攻撃を避けるために僕達は立ち止まった。


 道を塞ぐように、建物と建物の間に蜂の巣が作られてしまっている。蜂の一匹の大きさは抱き枕ぐらい、変な例えだけどふっと思いついたのはそれ。まとまって襲って来るのでさっきみたいな空中に広がる範囲攻撃が有効みたいだけど、数が多過ぎて見る限り30人ぐらいの黒塗りの冒険者達が足留めを喰らっている。


「どうする? あの巣を飛び越えるは無理だろっ、上の方で蜂がブンブン飛びまくってるし」


「見事に邪魔だなっ、それに目の前の人間共も邪魔だ。イーニー、ひと思いに全部やるか?」


「ハル、あの蜂蜜の匂い、美味しそうなの……お腹が空いた。私あれが食べたい」


「今は遠慮しろっ。おいっ、そこの人間ども、背中が疎かになっているぞっ」


 突然背後から声がしてさ、振り返ると怖い顔をした巨大な黒い犬型モンスターが睨んでいる。普通ならヤバそうなモンスターに挟み撃ちにされたって勘違いするよねっ。左右に広がって蜂の襲撃に構えていた後方の冒険者達が、それぞれの武器を僕達に向けて何か叫んだ。


「ジャガイモがゴロゴロしてんじゃねぇよっ。おまえ腐ってんのか?」


「けっ、イヌっころが。短足」


 あっ今のでハルの眉間にシワが寄った。やめろやめろっ、相変わらず冒険者達の言葉は悪口に変換されてるんだ。まともに言葉を話せるのは僕達だけなんだ、あれは彼らの本当の言葉じゃないっ。


「ちょっと待ってみんな。みんなは僕の言葉がちゃんと聞こえてるかな?」


「グゥオッ」

「淫乱がぁ」


 何て言ったんだろう? 淫乱ってなんだよ。取り敢えずみんなの様子が変わった。僕がハルの狐火のフィールドに包まれているお陰で、ちゃんと言葉を発する事が出来てる事に驚いただけだろう。


「あのさっ、通り抜けたいからちょっと開けてくれないかな。僕はラ……あっそうか、姿は真っ黒に見えてるんだよな。まいっか、みんなに被害が出ないように気をつけるから、道を開けておくれよねっ」


 バァンッ


 僕に向けて放たれた矢をイーニーが叩き落とした。イーニーと言うよりも、イーニーが使役する黒い影が僕の足元の影から姿を現している。


 ビュビュビュビュビュッ


 次々と飛んでくる矢には魔力も込められていて、時に光のエンチャントが掛かっていた。そいつはイーニーの影には相性が悪くて影の体が削られて行く。


「もういいでしょっラヴィ、お馬鹿さん達には犠牲になってもらわなきゃ。どうせ数を減らさなければならないんだし」


 まあ、確かにそうだ。上層へ登れるのは全員じゃない、次は何人が登れるんだっけ?


「どうするんだ? 僕にはこんなにたくさんの相手は出来ないよっ」


「本当に? ラヴィってとっても強いんでしょ」


 いや強くない。光の魔法は使えるし緑の力は無限大だ。だけど、どちらも人を倒す為の道具として使ってはいなかった。どちらかと言うと、植物さえあればどうにでもなると思う。植物、緑、花、鉢植えのお花、一輪の花、どこかに無いのか?

 前方にまた蜂の大群が押し寄せている。後方の奴らも本当は前衛の補助に回らなきゃならないはずだ。どうする? 手伝った方がいいよね。


 ピシッ、ピシッ、ピシッ


 えっ、飛んでる蜂から蔦が生えて羽に絡み付いて空中から蜂を落としたっ。誰か緑系のスキルを持った冒険者が居る。あの攻撃って……『アイビー・シード』 何故か技の名前が頭に浮かんで来る。理由何て無いけど、多分僕はAIとして適応しているんだろう。そんな考えが頭をよぎったけれど、『アイビー・シード』 覚えたよっ。種を投げつけてそれが敵に当たると本来の姿になる、アイビー・シードは蔦の種を投げつける技だ。敵に纏わり付いて動きを封じる時に使われる。

 落ちた蜂を寄ってたかって剣士達が斬りつけている。あの蔦、今ならまだ行けるっ!


「グゥォォォォォォォォ」


 黙ってやるよりなんかカッコいいかも。緑の力の奔流が湧き上がって来る。切り刻まれた蔦たち、甦れっ、復活するんだっ!


「レゾネイト・アイビーチェイン」


 僕の口から勝手に漏れた呪文が、蜂の残骸の中に残されたバラバラの蔦を呼び戻した。太く強く色濃くなってそれぞれが地面に根を生やすと、槍を放つ。


(ラヴィ、ありがとう。僕達もう負けないよっ。蜂は任せてっ)


 次々とアイビー達から声がかかる。彼らは地面に根を生やしそこから蔦を槍のように伸ばして蜂を貫いて行った。


「あとはバリケードみたいな蜂の巣をどうにかしないと。イーニー壊せる?」


「やっぱりラヴィって強いんだっ。植物を使えるのね、それで今まで何もしなかったんだ。なるなる、ハル、ラヴィが蜂蜜を食べてイイって言ってるよ」


 言ってねぇよっ。なんだよ、そのキラキラ懇願モードは? ハルヒメはどうなんだ、早く先に進まなきゃ駄目なんだろっ?


「お腹は空いたわねっ、食べちゃおうか」


 イーニーが大人のイーニーの姿になっちゃった。頭に狐耳が生えてる美人さん、なんだこの姿、ハルヒメはどこに行ったんだ?

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