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73 いきなりの試練

 ──ダミナの町の郊外に現れた試練の黒い塔(ブラックオニキス)。世界各地にも同じ物が現れて、今まさにその門が開かれようとしていた。


「時は来た。この薄ぼらけた世界に暗黒の……」


ウォォォォォォドカドカドカドカドカドカッ


 あ〜あ、ゲートキーパーが何かを言おうとしていたけど、背後の扉が開いたもんだから待ち構えていた冒険者達が一斉に突入してるわ。


「俺達も行くかっ、皆んないつも通り連携を忘れるなよ。今回はラヴィちゃんも居る、死にかけても何とかなるから頑張れぃっ!」


「「「「「「「おうっ」」」」」」」


 パーティリーダーのガルさんの掛け声と共に、俺達も塔の扉をくぐり抜けたんだ。



 ◆◆◆



 何かを通り抜ける感覚、そしてそれを抜けた後に目の前に広がったのは巨大なホールだった。でかい、反対側の壁が遠すぎてよく見えないほどだ。そして予想に反して明るい色合いの床と石積みの壁。あれっ、みんなは? 一緒に突入したはずのガルさんが、巴御前が居ないんだけど。というか周りに人が居ない。かなり離れた所に黒い人影がチラホラ見えるだけだ。


「グォー殺してやるっ」


 遠くから叫び声が聞こえた。早速モンスターの出現か? つーか今襲われたら僕やばし、周りに緑が無い。武器ねーし。えっと、パーティチャットで連絡してどっかに集合しないとね。出来る限り早くしないと……げっ、えっ、パーティが消えてるよっ。強制解除されたのかっ?


「皆殺しだっ」


 んんっ?! 俺今何て言った? 『参ったなぁ』って口に出した筈だぞ。


「殺すっ」


 待て待て待てっ、『マジで』って言ったんだぞ。何で『殺すっ』って口から出てるんだ?

 じゃあ今度は『ふざけんなよっ』って言ってみるぞ。


「喉を掻き切ってやるっ」


 言ってねぇよ。しかも凄い嫌な言い方してた、どうなってるんだ? なんだか危険を感じて俺は背後の壁の方へ後退りをした。せめて背中の安全は確保したい。



 [開始30秒前]



 天井の方からアナウンスが聞こえた。背中の壁の高さは10mを超えている。外から見た通りの六角形のホールに思えない。円形の闘技場、おそらくそんな感じの場所だ。窓すら無く、明かりは床や壁に埋め込まれた光るブロックだけで、フロアの中央部が真っ白に光っているので多分あそこに柱があってそこは全部光っているんだろう。


 人影が沢山見えるようになった。俺の近くにも黒い人影が近づいて来ている。皆剣や槍、エンチャントの施された煌めきを放つ弓とかを手にしている。丸腰なのは俺だけだよ、なんかあったっけ? こんな事ならリサのマジックワンドを借りて来れば良かった。


「見つけたぞっ」


 不気味な低い声がする。


「来ないでっ、来たら殺すわ」

「ふははははっ、この剣の錆にしてくれる! 最初の餌食はどいつだっ?」


 絶対おかしい。俺も何か言ってみよう。『皆んな落ち着いてっ、もうすぐ始まるって言ってるし共闘しようよっ』だな。


「来たな虫ケラどもがっ、地べたに這いずくばれ、糞虫どもがっ」


「ぶっ殺す」

「死ね」

「ひゃはははっ、内臓をえぐり出して引き裂いてやるっ」


 返事が来たけど最悪な言葉しか聞こえなかった。そしてなぜか俺に向かって三人が近づいて来ている。距離は20m程、なんかあいつら連携しているのか正面、左右と逃げ場を塞ぐように武器を構えたままでゆっくりと……


「下手くそが、そんなボロい武器を振り回すのは素人だけだ」


 そんな事言ってねぇよっ! 『落ち着けっ、これってもう試練が始まってるって事だ』って言ったんだぞ。間違いないわ、チャット不可能、会話も変換されてしまって意思の疎通が出来ない。黒い人影はもうすぐそこまで近づいて来た。そんな、もしかして……やっぱりそうだった。


 三人の黒い人影は、近づいて来ても黒く塗りつぶされたままだったんだ。

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