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60 アンナの親衛隊

「これがアクエリアの街なのですねっ」


「初めてかい? アンナちゃん」


「はい。私はカイザー・バッドム様のお創りになられた世界の街しか知りません。こんなに人が多いなんて」


 アンナが見ているのは街の建物や景観ではなかった。種族の異なる姿の冒険者達が数えられないほど歩いている。背伸びをして見渡しても、人が多くて道の先が見えずアンナだけではどこに向かえば良いか分からなかっただろう。


 森で出会った冒険者達にガードされながら街の通りを10分程歩くと、巨大なエントランスホールのある建物に辿り着いた。


「着いたっ、アンナちゃん、ここが公文書館だ」


「はい、ありがとうございます」


 お礼は言ったものの、アンナが公文書館の入り口の外で立ちすくんだままなので、取り囲む冒険者達もそのまま動けない。


「アンナちゃん、ところでだ、ここに何の用があるんだい?」


「はいっ」


 返事をしてアンナが少し何かを確認していた。


「はいっ、私は手紙を渡すためにここへやって来ました。どなたかスワン様とカル様をご存知ありませんか?」


「スワン様? カル様? 誰か知ってるか」


「スワン様って言えば、アラネア公爵スワンじゃないかな? あの人GMでしょ、なら城か公文書館のGMの詰め所に居るんじゃない?」


「カル様って人は知らないなぁ、でもスワン様なら多分その人だよ。ってこれ、何のクエストなん?」


「私のお手紙をお届けするクエストなのです。スワン様はこの建物の中のどこにいらっしゃいますか?」


 明らかに中に入っても迷子になる大きさの公文書館。アンナはここまで案内してくれた冒険者のリーダーに腰のポーチから何かを出して渡しながら言った。


「これは?」


 黒い天鵞絨袋を手にしたリーダーが中でカチカチ音がするのを気にしながら言った。


「お礼です。それは私の宝物です。どうぞ皆さんで分けて下さい。7人分入っていますから」


「開けて見てもいい?」


「はい」


 不安そうにリーダーの様子を見ているアンナ。


 彼女は案内をしてくれた事に対してお返しに何かを与える事は当然だと判断していた。それは彼女の主人であるバッドムRが、アンナの献身行為の後に必ず何かを与えてくれるから。


「うわわわわわっまっまじっすか!」

「何それっ」

「静かに静かにっ、騒がないっ」


「これって……まさか。ネットに出てた激レアの」


「駄目ですか?」


「いやっ、こんな凄い物を貰っていいのかと」


 他の冒険者達に見られないように手の中に包み隠されているのはクリスタルの種。光を透かしてみれば虹色に輝く『復活の果実の種』であった。


「ありがとうアンナちゃんっ、こんな大事なお宝を俺たち全員にくれて」


「良かった、喜んでもらえた。それで、あの、スワン様とカル様を一緒に探していただけませんか?」


「勿論ですっ。俺達は最後までアンナちゃんのお供をさせて頂きます。なんならたった今からアンナちゃんの親衛隊として活動したいと思う所存です」


(みんなっどう? 勢いで言ってしまったけど、どうかなっ?)


(リーダーナイスッ!)


「どうか宜しくお願いします。お手紙をお届けするのです」


「よしっ、とりま中に入ってGMが出入りする手前まで行こう。俺達はあそこまでしか行けないけど、あそこで叫んだら中のGMが出てくるんじゃないかな?」


「そうっすね、じゃああそこまでアンナちゃんをガードして行きましょう!」


「「「「「「「おうっ!」」」」」」」

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