46 夜の豹、改めナイトパンサー
新しい*ギルメンが加入して大所帯となったギルド夜の豹は、心機一転ギルドの名称をナイトパンサーに変更していた。そもそも巷でも、誰も夜の豹とは呼ばずにナイトパンサーと呼んでいたので、ギルメン達にとっても変更されたギルド名に違和感はなかった。
◇◆
「リッチーってあんたの剣じゃ斬れないでしょ。もう『ミストラルの剣』は使えるようになったの? ちょっと聞いてる、AZニャに言ってんのっ」
ガキーン、ガキーン
「あっ、それ僕に言ってたの? ちょっとごめんっ、今それどころじゃないし! それより巴さん援護してちょ」
「うぉりゃー、セカンドセレイド・クロスファイヤー」
バンッ、バスッバンバンバンッ
「うへぇ、ダッジさんの火剣キター! 凄えぇ。霊体のリッチー斬れるんすかっ」
「おうよっ、任せろっ! AZニャ。それより巴ちゃんっ、左の街道側頼むわっ。俺んとこのメンツにゃリッチーはちと厳しい」
「了っ」
魔弓士ミドルクラスを突破した巴御前が、ブルーのオーラを纏った弓を手に叫ぶ。
「ちょっとあんた達っ、レインアローを上から撃つよー。1箇所に集めたらせーので退いてぇ」
キン、ギンッ、ズバっ
「ぎゃぁ痛え、やべー死にそう、ちょっち斬られたぁ」
「巴さん助かりますっ。こいつら愛愛愛の普通の剣じゃ斬れない。魔法じゃないと無理ですっ!」
「何でもいいけど属性エンチャントが付いてりゃダメージは入るよぉ。あとは本人のスキル値が高いかどうかだけ、属性の相性もあるけどねぇ、ほらっ退がって。行くよぉっ、スパイラル・レイン・トルネードォー」
巴御前が放った矢はノーガンミールの青い空気を切り裂いて空高く打ち上げられた。そして矢が光と化した瞬間、渦巻きのエフェクトと共に矢の雨が地面に突き刺ささった。
ズバババババババババババババババババババ
「「「「ヒグゥエァァァァァァァァ」」」」
「「「「ヒギィヤァァァァァァァァ」」」」
10体は居たリッチーが、水属性の矢の雨に打たれて悲鳴をあげる。身体じゅうに開いた穴から白い煙がもうもうと立ち昇る。
「今よっ、穴が空いたんだから実体化したわ。さっさと突っ込む! ほら行けこらぁぁー」
「はいよー、ミタラシたん行くぜぇっ無理すんなよぉ、おいらの後ろに続けー。だあぁぁ」
バシッ、バスッ、ズババっ、ガチーン、ザクッ、ババババババ
「おうおうやるねぇ愛愛愛ちゃん。僕の出る幕ないじゃんっ」
「せりゃー、とうっ、そりゃあよっ、はいっ、ふんっ、剣が当たりゃこいつらぐらいどうって事無いんだっ、おりゃぁっ、いっちょあがりっ!」
リッチーが着ていた黒い布が全て切り裂かれて奴らは消滅した。愛愛愛の剣撃によって弾かれた、リッチーズクラウドピックが地面に残されている。
「わおっ! やるじゃんスリーラブくん。そっちはよしっ、ほんじゃミタラシたんは材料拾っておくことね、ってガルさんはどこ行ったの?」
ドコ ドコ ドコ ドコドコドコ
「うぉぉぉぉぉお、タミメータ見つけたァァァァァ」
右の街道の枝道から地面が揺れる音と、ガルフの叫び声が聞こえた。
「どこ行ってんのよ、大声出すなとか色々言ってたのに自分は森の中?」
「タミメータっす、えっとえっと『ギリュウワル・ソード』はどこだぁ」
ドンドンドンドンドンドンドン・・
「1匹じゃなさそう、もう来るよっ、さっさとしてっ。あーもうそもそも盾役がモブを引っ張ってくるんだから、誰が他に盾になるのよっ? AZニャ、あんた我らの尊い犠牲になりなよっ」
「やだよぉ〜、俺じゃぶっ飛ばされてから踏み潰されて終わりだよぉ。まじ怖えんだぞぉ」
尻込みするAZニャを押しのけてダッジが登場した。
「うしっ、ガルフさんと入れ違いで俺がタンクするからミタラシたん、回復とバフ頼むぜっ」
「了解だよぉ団長、じゃなかったダッジ。アイダブケイ」
=ダッジのプロスペクトタワーシールドの防御力が2倍になりました=
「ワゥワゥわああ、もう来るよぉ。ホーリオール」
スリーラブ(愛愛愛)が近寄って来て回復魔法を唱えた。
ポワワーンという音と共に金の魔方陣が地面から浮かび上がる。
=パーティメンバーのHPが回復しました=
「すまーん、気配がしたー、ビンゴだったァァァァァ、もう着くぞぉぉ、カウント7秒前、6、5、4、3、2、1……」
「「「「0」」」」
全員が身構えたっ!!