40 突入ノーガンミール
「もうそろそろじゃない? 地面の様子が変わって来たよ」
サクラアクエリアの船内、船首部分の寛ぎの書架の部屋は、今また巡航モードに戻されていた。
今回は少しシートのデザインが変わっていた。かなり余裕のあるスペースに前後に並ぶ動き易い操縦席とそれを取り囲む全方位空間モニター、前席には操縦桿が装備され、後席は情報処理や船体のコントロールを担当するようだ。
そのコントロールボックスが左右に2つ並んで、船橋と化した部屋にあった。左側にリサとラヴィが、右側にロゼッタとモフモフうさぎが座ってモニター越しに会話をしている。
「本当だ、街道沿いになんか馬車が走ってるよね。すごいなぁこんなとこまで人が来てるんだ」
「拡大する? ローズ、倍、倍、倍、倍、倍」
「おぉぉ、もっとリサアップ。ナイスアングルッ」
「はぁ? ケンカ売ってんのかなローズはリサに。言ってごらんなさいっ、このエロガッパ」
グチャンガチャン・・
画像を拡大して、馬に乗る冒険者エルフの胸元を覗き込んだラヴィに気がついて、背後からリサがポカポカ叩いている。
「ちょっとリサ、壊さないでよっ」
「なんか超仲良いなラヴィちゃん達。相変わらずかっ」
モニター越しに話さなくても、そのまま会話は出来る。ただコントロールボックスの空間を閉鎖すれば、そこだけの密閉空間とする事も出来る。
追加されたのは戦闘時はサクラアクエリアの船体から離れて、重量から解放される機能だ。これは前回敵からの攻撃で、船内のクルーが弾き飛ばされて航行不能になった経験からの改良点だった。
「また全部がスケスケだし。なあロゼッタ、俺何か嫌なんだよな。壁も床も無いみたいな」
「シートは透けてないのよ。怖がり」
「だって高いじゃんここって」
「あなた普通の時、空を飛んでいるのにどうして怖いのかしら」
「もういいから……でさっ、確かに青白い岩が多くなってきたな」
「ノーガンミールに入ったわ。リサ、ローズ、ふざけるのはやめて。高度を下げるわ、まずは冒険者達が集まる場所を探す」
◇
世界の繋がり。変化の糸口、それを見つけてランスロック岩井のサーバーからの影響がどこから来ているのかを探る。そしてそこからバッドムRを探す。
曖昧な作戦だ。だが、ロゼッタの偽物がこの地域で冒険者を殺しまくっている、スワンはそれが真凛というロゼッタと同じ、スワンのクエストから産まれたユニークキャラクターだと言った。
彼女達が生まれたのはランスロック岩井のサーバーの中でのクエスト。つまり岩井のサーバーのからアンタレスの世界に彼女達が来る事が出来る場所が、既にあると考えられるわけだった。
GMカルがあのクエストでリサの代わりの奏音に殺されたらしい。バッドムRが行方不明になって、真凛がこの世界に現れた、恐らく奏音も現れている。
彼女達を探し出す事がバッドムRを探す事になる、ラヴィ達はそう考えていたのだった。