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24 盗撮されてワナワナと震えるラヴィ

「仮説を述べるよラヴィ君」


「はい」


「君という存在は、白鳥君の用意した量子系記憶媒体の中にある。いやあるというよりも君自体なのではないか?」


 スワンが頷いている。


 ランスロック岩井のモニターにチャート表が次々と描かれて行くのを、岩井の説明を聴きながらラヴィも見つめていた。


「次に、リサやロゼッタという基本情報と埋め込むAI、感情エンジン自体は我々が持っていた。そのリサとロゼッタは君の世界の中で生まれて何度か死んだ。しかしこちらの世界に転生させる時に白鳥君は彼女たちを君の世界とリンクさせている」


「そうしないと彼女達のスペックは完全に発揮出来ないからです」


 スワンが言った言葉もモニターに書き込まれて行った。


「君達の記録は君の世界の中で常にセーブされ続けている。そしてこちらの世界、つまりアンタレスの本体のサーバーで活動しているの君達の体は、あくまで仮の姿であるアウトプットする為のアバターでしか無いんだよ」


 わかりづらい説明を、画面に書き起こして繋いで行くランスロック岩井。


 画面に人の画像が浮かび上がり、そこにはラヴィやモフモフうさぎ、その隣に岩井自身やスワンもあった。


「つまりここに居る私や白鳥君も、アバターだ。だからアバターが壊れても、本来なら大元の記憶体である現実世界の人間の我々が壊れたりはしない……筈だった」


 画面に脳の絵が浮き出て丸で囲まれた。更にクエスチョンマークが横につけられる。


「人の脳の記憶というものは、決まった場所に保管されるという概念ではなくなってきている。ありとあらゆる信号を結びつけて記憶という形を作り上げていく。基本となるのはその信号に寄り添う時間軸だけだ、とな」


「えっと」


「あっ、ラヴィちゃん。岩井チーフが言ってる事をわかりやすく言うとさ、ラヴィちゃんが言ってた緑の力。植物が見ている、植物が覚えている、植物が情報を伝播する。植物は君を見てる、君を覚えている、君はいつでも植物と繋がっている、緑の加護という能力で。それはつまり君というここにある体が壊れてしまっても緑が覚えている。それ以上に君がワールドの根幹を成しているんだから、その気になれば君はどこにでもアバターを出現させることが出来るだろうし、そのアバターの複製をたくさん作っておけば、必要がある時にはそちらに乗り換えてしまえばいい」


「んと、それってチートかな?」


「うん、すっげーチートだよ。干渉型AIの特別変異体と言って良いかも。わかっているけど解明出来てないんだ、だって僕のサーバーは常に変化しているから。君がサーバーの中のどこにあるのかもわからないし、リサもロゼッタの情報を書き込んだ筈の場所すら消えてしまっている。なのに君達はちゃんと居る」


「全然わからん」


「うん、僕も全然わからない。だけど君やリサは緑が絡んでいると思う。ロゼッタは何が絡んでいるのかさえわかっていない、空気かなって思うこともあるけど。マッテオはマッテオで独自の進化を遂げているように見える」


「ユニークアイテムも同じだよ、白鳥君。あくまで君のサーバーで作られた物だが」


 モニターに双剣のライジングサンが浮かび上がり2本並んで回転を始めた。その隣にイザヤのオブリビオンの杖が現れて、錫杖の白黒の円形の上飾りが揺れる。


「他にも私の知らないユニークアイテムが存在するのかな?」


「いえ、アイテムとしてはこの2つです。あとはキャラクターで紅竜リハクが居ますね」


「まあラヴィ君、あちらのサーバーで生まれた物は全て特殊に進化を遂げている。そして君が居る限り彼等は復活する事が出来る、そして君自身もだよ」


 目をパチパチさせて、首を傾げるラヴィを見てランスロック岩井が言った。


「ラヴィ君、君は君自身に常に監視されて記録されていると言える。そして今君が目と耳で得た情報は、君という端末からリアルタイムで白鳥君のサーバーに直接送られているわけだ」


 バッ、バッ、バッ、バッ、バッ・・


 モニターが暗転した。そして白い文字が1文字ずつ効果音と共に浮かび上がって来た。



【君は復活出来る】



「例えこの場で君が壊れようとも、君が壊れてしまう直前までの記録と共に、君は復活出来る。君が復活したいと思っているのならばだ。これが私達の出した結論だ」


「つまりね、ここに居るラヴィちゃんが壊されたとしても、ここに居るラヴィちゃんは僕のサーバー自体が操作している末端のセンサーみたいな物で本体にはダメージは無い。しかも僕たちのアバターはデータの塊でコピーが出来る。つまりラヴィちゃんは、今のラヴィちゃんの体を自由に再生出来るはずなんだ」


「自由に作る事が出来るって……つまり、もしかしてこんな事かな」


 そう言ってラヴィは立ち上がり、フレディにしか見せない女の子の姿に変わった。本人はリサの糸を纏って外観を変化させていくイメージで女の子になっている。


 ── しかし


 ラヴィの女の子の姿は本当に姿形が変化したのだった。胸が膨らみ、背丈が低くなり、腰がくびれて手足が細くなる。着ている服がそれに合わせて変化していくのは、おそらくリサの糸の状態変化の現れであったが、身体自体は確実に変わってしまっていた。


「はっ、はっ、あははっ。私、本当に女の子になっちゃった。おかしいと思ってたんです、だけどこれは女神様の泉の力なんじゃ無いかって思ってて。でも、でもフレディはどうして」


「フレディ君は君のすぐ近くに居るからじゃないのかな? たまに手を繋いだりしてるだろう」


「えっ? なんで知ってんの」


「あっ、ああ、いや、気にしないでラヴィちゃん」


「昨日もじゃれ合っているのが見えたとの報告データが映像付きで届いている、ほらっ」


 ランスロック岩井のモニターに、ラヴィのアパートの2階の窓辺でフレディを抱きしめて微笑む女の子のラヴィの姿が拡大されて流され始めた。


(最悪……盗撮されてたんだっ)


 初めて見るのかスワンも狼狽えている。その隣で唇を噛んで拳を握りしめた女の子は、とても可愛いくワナワナと震えていた。

アバター:


仮想現実世界の中で使用するキャラクター群を、アバターと称している。

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