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23 ラヴィアンローズ、この世界での命とは

 ギクッ


 まさにギクッとしてしまったラヴィ。


「ハルト君、静かにしまえ。その話はまたの機会にしなさい」


 ランスロック岩井はそう言うと、ラヴィにスワンの隣に座るよう指示をしてから、後ろのモニターに手を伸ばした。


「スワンも怒られたの?」


 ラヴィが座りながら小さな声で尋ねると、スワンは声を出さずに首を横に振った。心なしか表情が暗い。(うつむ)いて顔にかかった金髪をかきあげると、スワンは長いため息をついた。


「ラヴィ君、君はまだ知らないのか。いや、街の変化には気づいているはずだ。ここに来るまでに何か気づくことは無かったかい?」


「えっ、あの、確か昨日からお酒が街に溢れているらしいです。この件は僕じゃないんです、僕はお酒なんて飲んだ事がないし」


(昨日初めてビールを飲んだけど)


「うーん。やはりか……スワン君、君の予想が正しければこれは達也君の影響なんだな」


「スワン、達也君って誰の事?」


「R、バッドムRだよラヴィちゃん。岩井チーフ、話してもいいんですよね?」


「あぁ、構わない」


「ラヴィちゃん、達也がハマった。戻って来ない、それどころか」


 そこまで言ってスワンは、ランスロック岩井の顔を見た。岩井はスワンに向かって頷くと、モニターの画面を真っ暗に切り替えてから口を開いた。


「スワン君、やはりその先は私からラヴィ君に話そう」


 ドカリッと椅子に腰掛けると、ランスロック岩井はラヴィに向かって言った。


「バッドムRの心臓が止まったんだ。つまり現実世界の立花達也君の心臓が止まった」



 ◇◆



 1度命を失ったバッドムR。救命措置で息を吹き返しはしたが、意識が戻らないままだった。そして今ここに集まっているGMは、アンタレスの世界に変化が現れている事から、もしかして達也が……バッドムRがこちらの世界のどこかに居るのではないか? という事で総力を挙げて調べているとの事だった。


「ラヴィちゃん、岩井チーフは量子系記憶媒体をもう1つ用意したんだ。達也はその中で僕のクエストをインストールした後に、自分でクエストに入って行った。まるで君やモフモフうさぎのように」


「えっ、何で?」


「それは軽井沢君から聞いた話だが……」


(軽井沢君? 誰、カルイザワ→カル? GMだったカルの事かっ)


「軽井沢君ってそこに居るカルの事?」


「あぁそうだ。言ってなかったか。GMカルとは軽井沢君の事だ。達也君と一緒に私のサーバーにアクセスして何かを起こした」


「またですか」


 ラヴィがそう言ってカルの方を見ると、カルは口をポヤンと開いたままモニターを一心に見つめ、プログラムを展開して作業を行なっていた。


「キーボードが無い」


「うん、実際現実世界でキーボードを打つよりも、こちらの世界に来て作業をした方が効率が良いんだ。頭の中で考えた事をそのままアウトプット出来る」


「すごい進んでるんですね」


「そうだよラヴィ君、我々はまずこちらに来てから、更にこちらの中で構築されたシステムにアクセスしているんだ。やっている事は世界の創造だよ、これは……」


「チーフっ、あの達也の」


「おっ、すまん白鳥君。本題はそこじゃ無かったな、でだ、ラヴィ君。君にも達也君を探してもらいたい」


「バッドムRをですか?」


「君なら彼を見つけた時に、彼の戻し方がわかるんじゃないかと思ってね」


「ラヴィちゃん、Rはラヴィちゃんやモフモフに嫉妬してたんだ。リサやロゼッタと仲良くしているのを見て自分もって思ったらしい。それに世界の味覚がラヴィちゃんに依存している事も彼は知っていた」


 スワンもカルの方を見た。相変わらず集中しているのか、カルはこちらの事など全く気にしていない様子だ。


「カルがそれについて話したんだけど、カルとRは僕らが霧の谷ストレイに居た時に、実は監視をしていて会話も全て聞いていたそうだ。美味いものなら俺の方が食ってるぜって言って世界を俺に染めてやるって」


「そう言って僕と同じクエストに入って……死んだ? 死んだって本当のRが どうして死ぬんだ?」


 スワンが首を横に振る。さっきもその事を考えていたようだ。


「危険なのかもしれない。軽井沢君があのクエストに入った途端、殺されて帰って来た。しかもクエスト自体をこのモニター越しに監視出来るはずなのに、この状態のままなんだ」


 ランスロック岩井が自分の後ろの真っ暗なモニターを親指を立てて肩越しに指さした。


「映ってないですね」


「ここに行ってくれないか? 我々が行くと第2の達也君が出かねない。身勝手な事を言うが、ラヴィ君、君なら現実世界の本人が死ぬ事は無い。仮にこのクエストの中で君が殺されてしまっても、君は消滅する事は無い筈だ」


「本当に? 死んでも死なないって根拠はあるんですか? 僕もその事は気になってるんです。もしも今の自分が死ぬような事があった時に、リスポーンは出来るのかって」


(僕の命はこの世界で1度限りなのか? それとも無限に続けることが出来るのか?)


 確かめる術を持たないラヴィは、ランスロック岩井が画面を切り替えるのを黙って見ているのだった。

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