33 俺は獲物なのか?
(いまいちこのゲームのシステムが解らない。変な所にリアル感を出して来るから、持てる物に対して大きさや重量に制限があるのか? それとも他のゲームに良くあるどれだけでもアイテムを持ち歩ける、ご都合主義的な便利収納を採用しているのか、まあ見てみようか)
モフモフうさぎがアイテムボックスを開いた。実際は頭の中でアイテムボックスと思っただけで、コマンドが実行されたわけだが。
所持アイテム一覧
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武器
防具
アクセサリー
薬
道具類
消耗品
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モフモフうさぎは武器を、選択した。
武器一覧
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ライジングサン/ 装備条件有り /(装備する)
ダガー/複数所持可能、他武器との併用可能(装備中)
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(装備条件って何かな? 取り敢えず押してみる)
ライジングサン➖装備条件
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称号 Knight of Nightmare を得ている事(装備可)
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(マジか、俺しか装備出来ない武器じゃねぇか)
少しニヤケ顔になったモフモフうさぎは、ライジングサンの項目に戻って『装備する』を選択した。
いきなりモフモフうさぎの前に、2本のサーベルが現れた。刀身の長さは80cmちょっとで柄の部分は拳が隠れるようにドラゴンの頭の形をした半月状の鍔が付いている。刀身の根元の幅は広く、先端に向かって細く尖っていく特殊な形状をしていた。左右対称の剣ではあるが、鍔の部分のドラゴンの目玉、これだけが違っている。片方が紅もう片方が金色であった。
(うおー、超かっこいい! これって二刀流って事になるよな)
目の前に浮かぶ、2本の龍刀を眺めながらモフモフうさぎは手を伸ばした。
「両刀使い、モフモフうさぎ参上っなんつって」
(ダブルサーベルダンサーだ。所有者よ)
(げっ、剣が喋った! !)
(所有者よ、おぬしとは思念にて会話をする事になる)
(凄え、ライジングサン)
(所有者よ、良く聞け)
(はいっ、なんでしょう?)
(おぬしが我を使いこなすには、100レベル早い)
(えっ? どういう事)
(わかりやすく言えば、おぬしに使われる気は無いと言っておる。わかったか?)
(レベルが足りないから、装備しても使いこなせないって言っているんだよね)
(ど素人には似合わぬと申しておる。わかったか?)
(うっ、この剣もGM誰々がやっている訳じゃないよね。これが独立AIによる毒吐きなんすかね)
モフモフうさぎが、目の前に浮かぶライジングサンを掴んで動かそうとするが、前にも後ろにも全く動かない。
(しつこいぞっ、汚い手で触るな)
(ひっでー、俺って所有者なんだろう、なんでだよう?)
(我に似合う男になって来い。まずはレベル100からだな、せいぜい頑張れ)
(ちょっとまてよ、今やばいんだよぅ。なんか判らない奴に襲われているんだ、助けてくれよっ)
(我は戻る。せいぜい死なぬように頑張れ)
ライジングサンはそう言うと、モフモフうさぎの目の前の空間から消えた。
(あらまっ、どこ行った? アイテムボックスか? えっ、武器の所に入って無い。なんでなんで、消えたの?)
慌てているモフモフうさぎの両手に、見事なガントレットが装着されていた。余りに軽過ぎて全く気がつかないモフモフうさぎに、痺れを切らしたライジングサンが、思念を飛ばす。
(しばらくの間、この姿でいる事にする。ブロンズのドラゴンの籠手。おぬしにとっては只のお飾りでしか無いがな)
(じゃ、外しとくわ)
(いやっ、待てっ)
ブワァァワァァァゴォォォォォォ
凄まじい風がモフモフうさぎが潜む茂みを揺らした。次の瞬間、モフモフうさぎが本日3度目となる鳴き声が至近距離から放たれた。
グウェーアッ、クィェーヤァ、グウェーアッ
悲鳴のような鳴き声が余りに大き過ぎて、耳を塞いだモフモフうさぎは、先程の強風のせいでその身を隠す役目を全く果たさない有様となった木の根元で丸見えの状態である。奴からは完全に捕捉されていた。奴の姿をモフモフうさぎの方も遂に見る事となった。
(あぁぁ、これ、にげ、逃げ、うごけねぇ)
ドラゴンの目を見たモフモフうさぎは、余りのレベルの違いの為、金縛りになってしまった。
(詰んだ……)
ズンッズンッ・・ズンッ
顔を低く前に突き出して近づいて来る。 そいつは顔だけでモフモフうさぎよりも大きい、濃い緑と黒の混ざった体色の爬虫類、ヨダレを垂らした牙の大きな翼竜だった。