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53 C.C案件 つづき

「ごめんね、ラヴィ」


 C.Cが厨房に繋がる通路に消えるか消えないかの内に、フレディがまだ声変わりする前の少年の声で声マネをして言った。 その顔はまるでいたずらっ子の顔だ。


「なんだよっ」


「仲がいいですねぇ、ラヴィさんとC.Cさんって。 ()()()あったんですか?」


「それは別に……」


 核心を突くフレディの追求を、はぐらかすラヴィ。


「ラヴィさんの為なんですけどね。 何も知らない僕がついうっかり何かをリサさんの目の前で話でもしたら、取り返しがつかないと思うんです」


「いったい何を言う気だよ?」


「リサさんはカレー屋のガルフさんと仲が良くて、偶然にもラヴィさんはそこの店員の可愛いお姉さんと仲が良い。 世の中上手いこと行くもんですねって」


「いかないからっ。 ダメだぞっフレディ、そんな事を言ったらお給料下げちゃうぞっ!」


「えっ、むしろお給料が上がる案件だと思いますけど」


 フレディのしれっとした顔では、ラヴィにはフレディが本気なのか冗談で言っているのかわからなかった。


「何があったんですか? 教えてくれたら誰にも話しませんし、お給料も今のままでいいです」


「じゃあ話すよ。 大した事ないんだっ」


「ふ〜ん」


「あの日さっ、俺が朝起きて……」


 ◇◇◇


 ラヴィがアンタレスONLINEのβテスト2日目の朝、つまり緊急メンテナンス明けにログインした所から話は始まった。


 ラヴィ達のアパートのあるアクエリアの噴水広場にスポーンするはずが、何かの間違いで地下水路に出てしまった事。 そこでC.Cというヒューマンの魔法使いの女の子と出会った事。それはどうやら2人にだけ起きたバグであったらしい事。


 地下水路の奥で巨大スライムと遭遇して、2人で戦った事。 そこでラヴィは死んでしまった事。C.Cとはそこで別れて、今日まで会うことは無かったという事。


 ◇◇◇


 思い出すように、ゆっくりと話すラヴィを横目にC.Cは他のテーブルの準備をしていく。 ラヴィ達のテーブルの近くに来た時に、『それだけだっけ?』と、意味深に言いながら通り過ぎて行ったのは、彼女がラヴィの話をしっかり聞き耳を立てて聞いていた証拠だろう。


「それだけですか?」


「うんっ。 それだけ」


「さっきC.Cさんが、それだけじゃないでしょうって言って行きましたけど」


「そんな事ないよ、うんっ、確かにそれだけだった」


「ふ〜ん」


「フレディ、そのふ〜んはやめろよっ」


 首を傾げてどうしようか考えている様子のフレディが、何かに気づいたみたいで玄関の方を見た。


 チャリンッ


 鈴の音が鳴って店のドアが開いた。


「こんにちは〜、ガルちゃんお邪魔〜」


 ── リサが居た。

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