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52 カレー屋の看板娘

 ラヴィはガルフのカレー屋の前で元の姿に戻った。


「えっ、どうして?」


「だってここってナイトパンサーのギルドだからね。 みんな知り合いなんだ。 女装してたら俺ってわからないだろ」


「女装じゃなくて、本当の素直なありのままの自分って言ってませんでしたっけ?」


「それはフレディの前だけだよっ。 それにもしもリサが居たらまた女装してるって怪しまれるし、ロゼッタに知れたらなんかまずい気がするし」


 最後の方は独り言のように小さな声で言ったラヴィ。 先に階段を登ったフレディが、店を覗いてから振り返った。


「閉まってますよ」


「えっ?」


「中に誰か居ますけど」


「うーん、帰ろうか」


「えー、ここまで来て帰るんですか? もうちょっと待ちましょうよ。 もうすぐ開店かも知れないでしょう?」


「じゃあフレディ、聞いてきて。 中に居るウェイトレスのお姉さんに」


「雇い主には逆らえませんっ!」


 文句では無い文句を言いながら、フレディが店のドアを叩く。 ラヴィはドアの隣のガラス戸から店の中を見ている。


 ドアの音に気がついて、ウェイトレスのお姉さん[ヒューマンの女性] がやって来てドアを開けた。


「あれっ、子供のアバターって実装されたんだ。 ですよね? お客様」


「あの、お店まだですか?」


「まだ準備中なの。 だけどもうすぐだと思うから、店の中で待つ?」


「はいっ、ありがとう」


「いいえどういたしまして。 お客様って、本当に子供? あっ、失礼してたらごめんなさい。でも子供の声のエフェクトってないでしょう。 だから声が子供を聞いたらもしかしてって思っちゃったの」


「いいんです、あの、もう1人いいですか?」


「ええ、いいわよ。 窓際にいる人でしょ、一緒にどうぞ」


 ウェイトレスのお姉さんが、わざわざ店のドアを開けて待っていてくれている。 フレディが先に店に入って、その後に会釈しながら店に入ろうとしたラヴィとウェイトレスの目が合った。


「「 あっ!」」


 ラヴィはウェイトレスの前掛けに留められたネームプレートを見て、立ち止まった。 ウェイトレスの方は、ラヴィの顔の薔薇を見て驚いた顔をしている。


「C.Cって、C.C(シーシー)?」


「ラヴィさん?」


 見つめ合う2人に気づいたフレディが、側に寄って来て言った。


「元恋人同士の奇跡の再会みたいですね」


(お前はエスパーか!)


 ラヴィの心のツッコミはフレディには届かず、更にフレディは余計な事を言う。


「C.Cさんって言うんですね。 僕はフレデリック、ラヴィさんの家の管理人です。 管理人及びお目付け役でもあります。 つかぬ事をお伺いしますが、C.C様とラヴィさんはどんな関係なのですか?」


 C.Cは、大きな目をパチクリさせながらフレディの質問を聞いていた。質問に答えずに店の玄関を閉じると、改めて自己紹介を始めた。


「私の名前はC.C、ヒューマンの魔法使いです。 ラヴィとは初日に地下水路で出会ったの、あの時はその顔の薔薇って無かったけど。 あっそうだラヴィ、スライムっ。 あの後大丈夫だったの?」


 フレディは、C.Cがラヴィの名前を呼び捨てで呼んでいるのを興味深げに聞いていた。 ラヴィはその様子に気がついて、フレディを無理矢理店の奥の方へ押し込んで行く。


「私ね、ここでアルバイトをしてるの。 あの時はね、ラヴィがスライムに食べられて死んじゃったんで、その後逃げてそのままログアウトしたんだ」


 後ろからC.Cが付いて行きながら話を続ける。


「やっぱり地下水路ってバグだったみたいだね」


「うん、でもあの後しばらくの間私はログインしなかったの。 ちょっとビビっちゃってさ」


 申し訳なさそうにラヴィ達の座ったテーブルを拭き終えて、去り際にC.Cが小さな声でラヴィに言った。


「ごめんね、ラヴィ」

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