27 新スポーンゲート???
寝起きのコーヒーを飲みながら、フルフェイス型の汎用型VRヘッドギアをチェックしてる。
やっぱゲームしながら飲み食いしたいから、口のところにストローが下から入らないか試してみたら、結構上手くいった。ただ飯は無理、食えるのは多分ポッキーみたいな細長いもの限定。
というわけで、いっちょ行きますか!
アンタレスONLINEの世界へ、ログインっ
……まだ早かったです。
メンテナンスが朝10時までってお知らせに書いてあるから、もう入れると思ったんだけどさ、俺の時計は遅刻しないように5分進めてたんだった。言ってなかったけど、俺、大学2年。今は試験も終わった春休みだからバイトがない日は、アンタレスをしこたまやろうと思ってるんだ。
さぁ、つまんない話をグダグダしたところで…
仕切り直しの、ログイン! いきまーすっ
△▽△▽
まだ画面は暗転したままだ、でも音が聞こえ始めた。
(チロチロと水の流れる音がする。チロチロ? もしかしてスポーンの場所が変わったのか?)
「あっ、つーか暗いやん。ここどこよ?」
周りを見渡してみるけど、暗くてよく見えない。
「誰か居ませんかー?」
(声が響くなぁ)
ドンッ
(後ろからぶつかられたみたいだ、音はしたけど画面が揺れた感じは無かった。だって見えないもん)
「誰か居る?」
(おっ、今ぶつかった奴か? ということはここが新しいスポーンの場所ってわけか……)
「いるわよ」
(しまったーっ! ! 痛恨のミス。地声のまんまで話してしまったー。完全にオネエじゃねぇか)
「あの、すいません。ここって真っ暗ですね、インしたらこんな感じなんですが、ここでいいんですか?」
「えっと、昨日の夜は街の外にあるスポーンゲートだったけど、メンテ後はいきなりこんな暗闇の中に放り込まれたみたいよ。あなた昨日インした人?」
「あっいや、今日が初めてです。なんかエメラルド鯖が面白いとか書かれていたんで選んでみたんですがバグですかね?」
「よくわかんないけどね、これから他の人がここに現れて来れば、ここが新しいスポーンゲートって事になるわね、でも、人が増えてる感じがしないし」
ジャブ、ジャブ、ジャブ、
水たまりを歩く音がする。
「あっ、壁がありますっ、今ぶつかっちゃった」
「ちょっちょっちょっちょっ、ちょっと待って。ここって声が響くし地下道か、地下水道じゃないかと思うの、誰も来ないしはぐれたら怖いから手を繋がない?」
「あっ、はい。そっちに行きます」
水たまりを歩いて来る足音が近づく。
(耳だけが頼りだ)
「ここにいるわよ」
「はいっ、あのぉ男?」
「そっちは女?」
「あっ、はい。魔法使いのヒューマンの女です」
(いや、リアルの女なのか聞いたんだよ。声は落ち着いた女の声をしてるし)
「私は、ラヴィアンローズ。体はおとこ、心は女よ」
(歯が浮くセリフだけど、真っ暗だから言えたし)
「まじっ、ネカマのラヴィさん?」
「こんな暗い場所で、男と女。2人っきりよ。あたしと、飢えた狼のどっちを取るつもり?」
「な、何言ってるのか、ちょっと良くわかんない」
(きーー、押し倒してやろかっ! !)
「まあ、こうして出会えたのも何かの縁よ。フレンド登録しましょう。はぐれても連絡が取れた方がいいから」
「はいっ、でもちょっとフレンド登録がわからないんで、そちらでやってくれますか? 」
「手を出して握手っ、それでフレンド登録完了よ。今ね、見えないけどあたしが右手を出しているから、握ってくれる?」
「あっ、はいっ。あっあった! じゃあ失礼します。あぁ、ほんとの手を触っているみたい! 温もりを感じる」
(くっ、柔らかい。いかんっ、へんな気になりそうだっ!)
[C.Cとフレンドになりました]
「C.Cっていうの?」
「はいっ、というか本当にラヴィさんだったっ!」
「よろしくねC.C」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします」
(俺たちはまだ手を繋いだままで挨拶を交わした)
「灯りが欲しいな。C.Cのスキルにライトとか無い?」
「もう見たんですけど、無いです」
「ラヴィさんは性、聖騎士ですよね」
(今、何か間違わなかったかい? 灯り、あかり、ひかり……あっ、あったっ!)
「C.C、今から⌘ 聖の衣 ホーリークロス ⌘ って魔法使うから動かないでね。いくわよっ」
「光の守護の恩寵を、ホーリークロス」