151 加護ありき
(刺さった……いや、何の感触も無い)
後から飛んで来たダガー " 眠り火 " をキャッチしたTAKA。
「今のはいったい」
「お前もそのうち覚えんじゃねぇの。ダークエルフの得意技、幻術だ。最初の6本は幻、今お前が受け取った1本が本命って事になるな」
そう言ったTAKA人形が、1人に戻った。
「あのな、体術のマスタークラスの中でも、今みたいに体を酷使するタイプの体術はそれ相応のあれが無いとキツイ。そこでだ、あれって何か分かるか?」
「体力」
「違〜う」
「素早さ」
「んなもん最初からある前提で話してる」
「補助魔法とか?」
「おめぇ加護って知らねぇのか?」
「あっ」
「だよなぁ、加護ってのはどんな条件をクリアすれば身につくかって基準がはっきりされていないから、まだ誰も掴みきれていないもんだ。これはお前達冒険者がこれから先に、系統付けて解き明かしていく謎のひとつだろう」
「師匠は何の加護をお持ちですか?」
「おいっ、いつから俺が師匠になったんだ。よく聞けよ、これは公開授業だ。たしかにおめぇが生徒役だけどな。見ている奴は沢山いるんだぜ」
(そうだった。今は俺がお披露目会場のスクリーンに映っているのか……)
「うん、でな、俺の加護は " 金剛の加護 " だ。 体自体が強い」
「その加護はどこで、どうやったら手に入るんですか?」
教えてくれるはずも無い事は分かっているが、TAKAは聞いてみた。彼は今、1人のアクターでもあるのだ。
「うーん、あれはきつかったぞ。確かこっちの肩から先が、いやこっちだったっけ。ぶっちぎれて無くなってた。内臓は破裂してたし、足もどっち向いてたかわかんね。つまり、戦ってボロクソにやられてあと少しで死ぬとこだった。けど、最後は俺をそこまで痛めつけたあいつらが力を授けてくれたんだ」
「あいつらって言うのは?」
「言っていいのか?……」
TAKA人形が、ここに居ない誰かと話しを始めた。
「すまん、待たせた。言うぞ、あいつらって言うのはお前もさっき出会ってる金剛力士像だ」
(さっきって、あの仁王像、ネカマのラヴィちゃんがとんちを出してくれたお陰で通過出来たあの巨像の事か)
「分かったようだな、あいつら曲がった事が大嫌いなんだ。もしぶつかるなら真っ直ぐ当たっていけよ、多分死ぬけど、気まぐれが起きるかもしれないしな」
「先生は1人で?」
「いんや、仲間が居た。じゃないと本当に死んでたよ」
「先生の仲間って誰ですか?」
「はいっ、おしゃべりはお終い。次行くぞっ」
「パシンッ」
TAKAの方を向いたままのTAKA人形の左手に、1本の矢が握られていた。頭の手前、突き刺さる直前だった。
「ざけんじゃねーぞ、このクソサド野郎っ」
矢を放ったのは、巴御前。 今まで囚われていた夜の豹の一輪の花であった。