139 3つの質問
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「武器をしまいなさい。これは命令なの、隠れている黒い奴も出て来なさい、バレているんだから」
ロイが花の回廊の真ん中辺りに誰か居ると言った瞬間に、右手に生い茂る白い花を咲かした植物に身を隠したアサシンのTAKA。
声の主はおそらくダークエルフの事を黒い奴と呼んでいる。
ナイトパンサーが隠れているTAKAに出てくるよう言った。
「私はこの花の回廊の主人よ。ここを通りたければ質問に答えなさいっ」
「我々はギルド " 夜の豹 " と申します。僕はギルドマスターのナイトパンサーです……質問とは何ですか?」
ナイトパンサーが姿の見えない誰かに向かって答えた。相手は女の声だ、どこかで聞いた事のあるような……
「3つの質問があるわ、だってさっき見たのはそんなクエストのはずだったから。まず最初の質問よ、あなた達が1番好きな料理を教えて」
(料理?)
顔を見合わせるギルドメンバー達。ゴニョゴニョとお互いの好物を確認しあったりしている。
「全員が同じ料理が好きなわけではない。その場合は?」
ナイトパンサーが代表して言った。
「なら質問を変える。あなた達だけでなくて、一般的に誰もが1番好きな料理で、喜ぶ物を1つ答えて」
「カレー」
と、ガルフが即答した。
「ラーメン、あっ、やっぱカレー?」
と、AZニャン。
「だれもが好きと言われると……大体の人は好きだろうな、辛さは別として」
スタンガンは辛口が好きだとロイに話している。
「あっ、僕もカレーでいいと思います」
「僕も同意見だ。TAKAは?」
TAKAは頷いて声のする空間を見た。
「答えはカレーだ」
「そう、カレーって料理なら誰が食べても喜ぶのね。ちょっと待ってね、メモするから……」
(えっ?)
姿は見えないが、おそらく質問をしてきている相手は今ポーチから手帳を取り出して、カレーとメモっている。
(何だ?このクエストは)
何か言いたそうなガルフに代わってナイトパンサーが言った。
「あと2つの質問を聞きたいんだが」
ナイトパンサーの想像では目の前にメモとペンを持った女の子が立っている。
「カレーって私が食べても美味しい?」
「それって質問か?」
「……」
「間違いなく美味しい」
「じゃあ、最後の質問よっ。誰もが食べて美味しくて凄く喜ぶカレーの作り方を今度教えなさい」
(もう質問と言うより、命令になってるじゃないか)
誰かカレーを作れる奴は居るか? と互いの顔を見回す夜の豹のギルドメンバー達。
「しょうがないな」
そう言って一歩前に出たのは、槍戦士のガルフだった。
「カレーは得意中の得意な料理だ。だが材料がこの世界で手に入るのかが分からない」
「大丈夫よ、お父様にお願いして用意してもらうから」
「クエストはもしかして終わりか?」
ナイトパンサーが言うと
「もう行っていいわよ。でもカレーさんは少し残ってね、今後の予定を話し合わなければならないの。だから他のみんなは通してあげるから」
姿の見えない誰かがガルフの方へ近づいて来る。
「もういいのよ、行っても。次はロゼッタ姉様のお屋敷だから……はっ! ち、ちがうの、早く先に行けばいいの。行かないとリサは怒るんだから」
(リサって言ったよね。この方はリサ姫?)
空気の読める男達、夜の豹のメンバーがガルフを残して先に進んで行く。
「じゃあな、カレーさん」 スタンガン
「お疲れ様です、カレーさん」 ロイ・クラウン
「俺にも喰わせろよ、カレーさん」TAKA
「すまない、先に行くよ。僕は辛口が好きなんだ……カレーさん」
最後にナイトパンサーが別れの言葉を告げて、彼等は走り去って行った、
「カレーさんは私がアクエリアに連れ帰ってあげるから心配しないでね」
「あの、姿が見えないんだが、ずっとこのままなのか? 姫」
「えっ、今なんて?」
「姿が見えないと都合が悪いと申しました、リサ姫様」
「どうして、ねえ、どうしてなの? カレーはどうして私がリサだ……」
お決まりのセリフを吐いて姿を現したのは、紛れもなくリサ姫、お披露目会場に居るはずのリサ姫であった。




