113 教会召喚!
《スワンっ、聞いて。いい事思いついたのっ!》
《ラヴィちゃんか、結構大変な事になってるぞ。ゲロ吐かれた》
《リアル過ぎでしょ、それって。あのねっ、呪いを解けばいいのよ。それで神社をその辺に作ろうと思うの。神社には神官のNPCが居るでしょう、このゲームでも神官は呪いを解けるんじゃない? どう、作った人》
《はははっ、ラヴィちゃん天才か。なんでそこまで頭が回るんだ。その手があったー! 教会でもいいぞぉ、神父も同じだ。ラヴィちゃんに渡した建物を作る端末ですぐ作れるよな》
《スワンも作れるでしょう?》
《今、大通りの途中で動けなくなった人達を運んでいるんだ。ラヴィちゃんが作ってくれ》
《了解、でも私は日本の神社を作るわよっ。じゃねっ》
(ヨーロッパの様式美も捨てがたいんだけれど、あっちの教会ってデカすぎるのよね。プレイヤーってみんな日本人なんだから、日本式でいいのよ、わかりやすいでしょ)
ラヴィは北門の内側の何も無い空き地、部隊の演習に使われた広い敷地に戻って端末をいじり始めた。
(あまり大きな神社じゃ今は困るよね。というか、というか、というか、神社って本殿に行き着くまでに色々あってちょっと大変かも。ん〜どうしよう、玄関開けたらはいどうぞってやれるのは、教会の方が向いてるみたいねぇ……はぁっ、仕方ない。教会にしよっ)
ラヴィはアクエリアの街と同じ形式である、ゴシックのジャンルから教会を検索する。出てくるのは大聖堂と呼ばれる物ばかり……
(どれにしよう? やっぱりステンドグラスが沢山使われているこのタイプがいいかな? すごいね、内部の様子も見れるんだ……明るい、荘厳な雰囲気、あぁ、現実じゃ行ったこと無いのに……これにしよう)
ラヴィが選んだ大聖堂は、高い石造りの天井から伸びる細い柱、その柱の間を埋めるステンドグラスから差し込む光が教会の中を明るくする典型的なゴシック建築の教会だった。
端末越しに空き地を覗いて、教会を置いた場合のスペースを確認してから、教会の向きを調整する。西を背にして建てるしか無さそうだった。
「光がどう射し込むかなんて、今は言ってられないわ。用が済んだら向きを調整すればいいんだし、今は取り敢えず設置すればいいんだから」
建物の敷地となる場所に人が居ないのを確認すると、ラヴィはポチった。
「ドォーン」
と、教会の出現に合わせて声を出したラヴィ。
「でっか! やっぱ凄いねこの端末。こんな建物が……感動」
大聖堂を見上げてラヴィは言った。
討伐本部からも、スワンの居る大通りからも、いきなり巨大な建物が現れたのが見えた。
GM専用回線では……
《なんだあれっ? スワンか?》
《いや、スワンはここに居る。スワン、あれは何だ?》
《うわっ、大きいな。神社って言ってたくせに、ちゃんとアクエリアの街に合わせているじゃないか》
《どういう事だ? スワン》
ピクシーとポールと一緒に居るハルトが言った。彼らは、自動精算システムの前で倒れた人達を移動させている所だった。ベルクヴェルクで水を飲んだ3人だったが、GMの無敵モードは今回役には立っていたわけだ。彼らに呪いの効果は現れなかった。
《もしかしてだけど、今ねミュラーからゴブリンの呪い球の話を聞いたの。それと関係ある、そうよねっ、呪いを解くために教会を出したとか?》
ソフィーが正解に辿り着いた。
《そうなんだ。教会には神官がデフォルトで付属している。あの大聖堂なら神官の数も多いから、呪いを解くのも早いはずだ》
《お前じゃなきゃ、誰が作ったんだ?》
《ラヴィちゃんだよ》
《えっ、ユーザーに作らせたのか?》
《後で説明するけど、彼……彼女はユニークキャラクターだ。僕の片腕としてGMをやってもらっている。モフモフうさぎも同じくだ。まぁ、彼はユーザーなんだけどね》
《まぁそこは置いといて。みんな、倒れた人達を教会の近くへ。スワンはラヴィちゃんに神官を連れて来るように伝えてくれ》
ラヴィの事を知るミュラーが声を挟んだ。行方不明事件と当事者としてのラヴィ。彼女がユーザーでは無かった問題。だとしたらどうなんだ?
(そんな事どうでもいいじゃないか。ラヴィちゃんはラヴィちゃんだ。あんなに可愛くて良い匂いのする可愛い女の子だし)
ミュラーのラヴィへの気持ちは、ついさっき変わったばかりだった。