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106 スワンの義務

 朝靄の中のアンタレスの街は、ゆっくりとしたピアノの旋律が似合う気がした。走れば頬に水滴がついて少し冷たい。もうすぐ朝日が街の外壁を越えて街をオレンジに染める……


 スワンの気分は言い表すには難しい。モヤモヤとしてはっきりとした先が見えて来ない現状を、笑って楽しんで一緒に乗り切る仲間だったはずの、カルとバッドムRが居ない。


 2日後の土曜日には、ギルド対抗戦。1ヶ月後にはベルクヴェルクとアクエリアの都市決戦、その後には海洋都市 "オセアノ" の実装。霧の谷ストレイのように、別のワールドに展開している様々なクエストを、ユーザーに試してもらって感想を聞く……


 βテスト前日には興奮して気持ちが昂ぶったまま、会社で寝た。



「なぁ、スワン」


 モフモフうさぎが、走るスワンの隣に来て声をかけた。


「スワンっ」


 返事をしないスワンにラヴィも声をかけた。ラヴィの背中にはフレデリックがしがみついている。モーションスキルがMAX値の3人には、フレデリックではついていけないからだった。


「あっ、ああ、ごめん。考え事をしてたんだ」


「手が足りてないんだろ、何でもするから言えよ。今のお前の顔ってさ、この前のマッテオさんの店の外に立ってた時と同じだぜ」


 スワンはあの後、ラヴィと話しながら自責の念に囚われて泣いていた。


「抱え込むのは無し。そう決めたのは私とモフモフさんと、スワン、あなたでしょう。またそんな顔をされたら、心配するわっ。ねぇっ、私もGMでいいんでしょう?」


 モフモフの言葉もラヴィの言葉も、まだスワンの心には届かない。


 カルとバッドムR、徹夜であーだこーだとシナリオを考えて……一緒に準備して来たのに、帰って来ない。俺達で作るアンタレス、凄いものを作るんだって



「ねえ、スワン聞いて。私はあなたに頑張れとは言わない……なんて事を言うと思う?」


 女の姿のラヴィが前を向いたまま言った。


「俯いた顔を上げなさいっ。スワンっ、あなたには頑張ってもらわなきゃ困るの。負けそうでも最後は勝つって意思を強く持って、そう振る舞ってもらう。聞いてる?あなたの負けは、私の終わり。最後まで責任を持つってあなたは言ったでしょう。だったら強くあって欲しい。あなたは強くなければならない。私がもういいって言うまでは、顔を上げて進みなさい。言ってる意味、わかった?」




 私がもういいって言うまでは……

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