20 乗っかる方が楽しいのさ
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ラヴィアンローズ>いやぁ、爽快! てかNPCって殴れるもんなの? しかも街の中で
モフモフうさぎ>普通に設定ミスか、運営がど素人ってことだよ。でもこんだけの世界を作り上げる会社だし、たぶんヒューマンエラーだろっ
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── ラヴィアンローズは背後の様子を見ながら走る。アポロンビターが連れてきた、別の2人の方が追いかけて来ている。
「待て、ごらぁぁぁ」
「ぐへへへへへっ」
(NPCがあんな事言う様に設定されているもんなのか? ダミ声だし、やたら声がでかいし)
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モフモフうさぎ>やっぱりこれも作り込まれたイベントか何かかな?
白刃のロビー>手下だけが追いかけて来てる。僕はあのタコに行くから、手下の2人は任せたっ
(ロビーちゃんが、僕モードに戻ってた。そして回れ右して行っちゃった)
白刃のロビー>飛び蹴り出来るか試してみるっ
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自分達をタコ殴りした後に逃げ去った3人。その内の1人が回れ右して向かって来ている。それを見て身構えるカルとバッドムR。
「1人帰って来たぞ、あいつロビーだっけな」
「お〜いっ忘れもんかーーー、ぐへへへへ」
「お前ら邪魔だ、どけぇ」
白刃のロビーから、女の子の声がした。
(えっ? 誰の声)
「ロビーちゃんが喋ったぁ!」
(って、言ってるモフモフさんも、自分の大声にびっくりしてあたふたしてるじゃん、ということは)
「あ、あ、あ、俺も喋れるぅぅ! やったぁ」
手でメガホンを作って俺も大声で叫んでしまった。
「本当に男だった……」
隣に来たモフモフさんが、残念そうに言った。
「すまんっ、でもスッキリした」
「あっロビーちゃんやばくね? ごらぁぁ、そこの雑魚の2人、ビビってんのか、あ〜? 」
モフモフさんがお尻ペンペンしながら、ロビーちゃんに向かおうとした2人のNPCに言った。
(もう、なんかおかしすぎる。ダークエルフのイケメンがお尻ペンペン。そして煽りに見事に反応するNPCの2人)
「ああああ、誰に口きいてんだぁ、待てやガキども」
「ぐへへへへへ、3倍ゴロシしてやんぞっ」
(すげー、あれ中身居るんじゃない? リアルすぎる反応だよ)
「表に出ろやっ」
モフモフさんがそう言ってから、俺に言った。
「あのぐへへを、先に狙おう」
「了解」
「外に出て右に」
「おけー」
俺達は走り出した、奴らも追ってくる。
(楽しい〜)
── その頃ロビーちゃんは
(わぁ、声が出た。しかも私の声だし超恥ずいっ)
とか思いながら、スワンに向かって飛び蹴りを喰らわした。
スワンは自分に向かって来るロビーの飛び蹴りを軽くかわしたはずだったのだが、かわされたロビーの腕がスワンの首にかかり、ロビーはその勢いを利用してスワンを背中から引き倒す。
それはまるであの伝説のプロレス技、スリングブレイドだった。
「ぐへぇっ」
何となく悪役風に、やられた感を出して言ったスワン。
ゲート近くでの騒ぎに気がついた他のプレイヤー達がざわめいた。と言っても、まだ文字チャットの段階なのでざわめいたのは掲示板の中でだったのだが……
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青い空>街の出口でバトル発生中!
水戸校門>スケさんっ、カクさんっ出番ですよ
DJ しげる>ヘィヨォ、なんか用かい? パーリィなのかい?
マツイ☆ランバート>大声で叫んでたよ
青い空>街の出口でバトル発生中!
HIRO Hisa>喧嘩か?
キングカズマ>うおぉ、あいつら喋ってるし
Mayu∬Mayu>あれ、ネカマのラヴィちゃんじゃない?
三毛猫ふにゃん>うぉー、あいつ見事なスリングブレイドかましたっ! 棚◯か?
トゥース埼玉>いやっむしろ、◯ス ロ◯ンズ
青い空>外に出たよー、バトル勃発? 見に行こう!
アリス>やばいよ、やばいよぉ
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結構見ている人が居たみたいだ。