表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/467

78 坑道の入り口

 何だかんだと30分程登り坂を歩くと、巨大な穴が山の中腹に現れた。ただの穴ではない、ドワーフが岩を削って広げた坑道の入り口だ。


 オレンジの光で照らされた坑道の中は、ドワーフの美学で彩られていて石の壁の至る所に装飾が施されている。


「誰も居ないな、歩くしかないのか?」


 ポールが入り口に立って言った。


「水の流れる音が壁からしますね」


 足元の石に手をついて、耳を澄ましていたピクシーが立ち上がる。


「おーい、誰かいるかー?」


 2人の吐く息の音すら響くアーチ型の天井。目を凝らし警戒しながら奥に進む。


「煙の正体はこれですか……やっとハルトも浮かばれる」


「おいおい」


 くすぶった焚き火の跡、まだ火種は残っている。焚き火の奥には巨大な岩の扉が固く閉ざされていて、それを打ち破ろうとして壊れたツルハシや、斧、ハンマーなどが辺りに散らばっていた。その中に長い杭が地面に転がっていて、先端にハルトの首から先が刺さっているのを見つけたピクシー。


 ピクシーは杭を手に持つとハルトの頭を近くの壁の角に引っ掛けて外した。


「まっ、1つ任務完了だな」


 坑道の外の扉から、ここ、内側にある今閉じられている扉までは50mあるかないか。横にそれる道も無いし平たく整えられた石の床は、焚き火のの跡を除けばさほど汚れてもいない。


 そしてグルリと見渡してもここにはゴブリンは居なかった。


「いつまで居たんだろうな?燃やすものが無くて斧とかの柄を薪がわりに燃やしているし」


「ハルトの首が消えました。良かった、これでハルトも元に戻れる」


「今はスティングだろっ。なんか元に戻る気が無さそうだけど」


「似合ってますしね。しかしゴブリンは居ないですね。ここの岩扉を開けようと頑張ったみたいですけど」


 振り返ると青い空が坑道の出口から見えた。


「確かに居ない。この扉から中には入れた様子も無い……だとしたら、もしかして逃げ込んだドワーフがいるんじゃないか?」


 そう言われて、閉じた岩扉にピッタリ耳を当てるピクシー。


 その間ポールは動かずに天井に立体的に彫られたドラゴンを眺めている。双頭の龍は今ピクシーが耳をあてている扉の真上から2人を睨みつけていた。


(助けて……助けて……誰か・ここから出して・・助け・)


「えっ、ポール。ちょっと、聞こえる。本当に誰か中に居る」


 見上げていた龍から目を離すと、ポールはピクシーの側に座って壁に耳をあてた。


(誰か・・うぅぅ、助けて・・)


「間違いねぇ、居るぞ。でかしたっ、ドワーフの生き残りを見つけたぞ。どうする?どうやって開ける?分かるか?ピクシー」


「いや、全然分からないです。何かカラクリがあるとは思いますけど、1回本部に戻って部隊をベルクヴェルクに移動させたら安心じゃないですか?もしゴブリンが暗くなる前に戻って来て、守りを固められたら何もできなくなりますよ。あいつらが居ない今がチャンスだと思います。急げば暗くなる前に部隊の展開も出来るでしょう」


「そうだな。ドワーフの生き残りが居る事を報告してここの開け方も調べてもらおう。よしっ、急いで帰るぞっ」



 △▽ △▽ △▽


 2人が消えた坑道の入り口のフロア。細工の好きなドワーフが隠し通路の1つ2つ用意していないわけが無い。


 時を同じくして街から消えていくいくつかの影が向かうのは、ベルクヴェルクから南西の方角。洞窟地帯が広がる "ゴブリンの王国" であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ