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55 助けを求める声

 ぞろぞろと入り慣れた狩場への獣道を、俊敏に駆け抜けていくゴブリン達。夜目が効く彼らには明かり必要無い。さらにはあまり大きくない背丈なので、背の高い草むらの間を通り過ぎて行ったとしても、姿も見えず足音すらしない為に、探す気があったとしてもそれは困難を極める事であっただろう。


 ゴブリン達は森に入って10分程で、この先に居るのがいつも狩っている獲物とは違う事に気がついた。


(何匹もいる、気配を殺している。だが物音を立てて移動している……しかも近づいて来ている。獣じゃ無い、俺達でも無い、人間か?)


「追い込むか?」


 手で合図をした仲間に、ゴブリンのリーダーは退いて罠を使うように合図を送った。


 普段の狩りでは、獲物を追い込んで罠にかける事が多い。しかし反撃してくるような巨大なモンスターや獣に対しては、わざと逃げて罠に()める事もある。


 森に入り込んだゴブリンのグループのリーダーは、複数の場所からする物音で相手が1人では無いと判断した。ならばいつもの場所におびき寄せれば良いだけだ。


(ちょうど適役も仲間の中に居る事だしな)


 合図を確認して、狩りで囮役をやるゴブリン達がリーダーの元に集まって来た。


 ゴブリンのリーダーは、つい先日ベルクヴェルクに現れた人間を捕らえた時に、その場に居たゴブリンを見つけると言った。


「今日の獲物の鳴声はお前がやれ。街でぶっ殺した人間の声真似が出来るだろ?」


「やっぱり人間なんだな、あれで隠れているつもりか? クククク、不細工な人間め」


 声真似をしろと言われたゴブリンがうれしそうに言った。


「俺達は、罠の周りで待機する。おいっ、お前、お前は街に戻って森に人間が出たって連絡をして来い」


 ゴブリンのリーダーが別のゴブリンに指示を出した。即座にの1人のゴブリンが消えた。続く様に他のゴブリンたちの姿が見えなくなっていった。


 ▽△ ▽△ ▽△ ▽△ ▽△


「うぅ、ぅぅ、助けて…… うぅ、誰か」


(ベタな文句に人間どもは、引っかかるのか?)


 ゴブリンのリーダーは不安を感じたがその心配は要らなかった。


 2人1組になって進んでいた偵察隊のメンバーの手が、ほぼ同時に挙がった。全員が前方から聞こえる微かな人の声に気がついたからだ。


 歩みを止めた隊員の、後ろを歩いていた部隊長ポールも、その声に気がついた。


「うぅ、ぅぅ、助けて……うぅ、誰か」


 途切れ途切れに聞こえる人の助けを求める声。


(誰か居る。もしかしたらゴブリンの襲撃から逃げ延びたドワーフかもしれない)


「痛いよ……怖いよぉ……うぅぅ」


(間違いないっ、森に逃げ込んだドワーフを助けて連れ帰れば、ベルクヴェルクの様子も聞くことが出来るし俺の部隊の評価も上がる、急がないと時間が少ない……)


 1時間後に森の聖堂に戻るという最初の話は、実際探索を始めてみると短すぎる事が分かった。だが今回は1時間で帰らねばならない、そういう取り決めだからだ。


 ポールが合図を送り隊員を呼び戻した。


「あの声が聞こえたか?」

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