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50 ゴブリン討伐戦線 偵察隊

 ドワーフの王子スティングの演説の後、前線の偵察隊の選考が行われた。ベルクヴェルク討伐本部から、隠密行動に長けたエルフが募集されて、参加希望者が3班に分けられた。


「ベルクヴェルクから約10km離れた場所に複数のゲートを設ける。ゲートと言っても(はた)から見れば自然に存在する巨木であったり、岩であったりする。帰還する時の為に場所を忘れぬようにしてくれ」


「質問があります。もっと近くにゲートの設置はできないのですか? 例えばベルクヴェルクの街の中の建物であったり、アクエリアのように街の噴水をゲートにするとか」


「それは出来ない。手元にあるのはベルクヴェルクの設計図。その中で動き回る独自のAI搭載のNPCがいれば、システムは誰かに絞って画面を見ることができるが、そこに居るのはポインタが設定されていないゴブリンである。ちなみに、ベルクヴェルクの街に居るはずのドワーフ達もそれぞれAI搭載のNPCだったんだが……はっきり言おう。ベルクヴェルクは設置されたばかりで、街のドワーフも数は少なかった。街の奥の鉱山にも多くのドワーフが住む予定だったんだが、まだ投入されていない。幸いな事にドワーフの人的被害は少ないんだ」


「じゃあさっきのドワーフの王子の演説は?」


「演出だ」


「1人ユーザーを殺したのが演出なのか?」


「まぁまぁ、俺は元からエメラルドサーバーだけどあんたは?」


「違うけど、何?」


「えっとな、俺達はそもそも初めてログインした時からぶち殺されてんだ。俺は連続で4回殺された……あれをやったのもGMだって話だ。そうなんだろ?」


「GMの暴走と理解してくれ。俺はよく分からん、エメラルドサーバーのGMがやった事だからな」


「まぁ、そういう事でこのサーバーじゃ殺されるのも当たり前みたいな感じなんだよ。普通じゃ考えられないけどな」


「あっそうだった。このサーバーってエメラルドか。納得したよ、わかった、わかった」


 エメラルドサーバー、何でもありのあり得ないサーバーである。他のサーバーのプレイヤーがそれに憧れて統合を求めたのは、全体の流れとしてユーザーには認識されていた。


 偵察隊は門の前での行動指針の説明の後、アクエリアの街の外に、こちらも約10km程離れた場所に設置された出発ゲートに向かって移動を始めた。


 討伐本部では部隊の編成が行われ、対人戦に強いとされる剣、槍、弓の混合編成部隊が組まれた。魔法中心の遊撃部隊、弓中心の遊撃部隊も編成され、各部隊の中でチームが組まれていく。


 今から戦うのは、普通のゲームに登場するモンスターではない。知能を備えた人を相手にするのと等しい。相手の行動パターンを見極めて、型にはめて倒すなどという都合の良い戦い方は通用しないと思われる。


 更に言えば、敵の策に嵌る可能性もあるのだ。こちらの行動がゴブリン側にバレていないと思われる今のうちに、先手を取る。


 索敵が終われば、持ち帰った情報を元に戦略会議が開かれる事になった。


 各部隊が討伐本部の近くに作られた演習場で戦闘訓練を始めた頃、偵察隊はようやく出発ゲートに到着した。


 森の外れにある古びた聖堂、土着の太陽信仰のモチーフである丸に放射状の線が周りに伸びた刻印が聖堂の壁に刻まれている。


「ここが出発ゲートだ。ここで日が暮れるまで待機する。その間部隊の行動ルートを決めて行くので、さっき渡した地図を各自出してくれ。まず……」


 夜陰に紛れて森の中からベルクヴェルクに近づく。夜目が効くエルフであり、森の民のエルフである。足も速く、索敵要員としては最適の人選であった。


 全員がゲートから移動する前に、1人だけ潜入させる。選ばれたのは、ロイ・クラウン。彼は所属するギルドのパーティで常に索敵を担当して来たという。


 彼の所属するギルド、 "夜の豹" は、アクエリアでも名の通った戦闘集団である。霧の谷ストレイで起きたモンスタートレインの中でも全員生き残り多くのアイテムを持ち帰った、アクエリアで今一番入りたいと言われているギルドであった。

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