46 リサとロビーの入れ替わり
「心配ないわ、きっとバレたりしないから。だってリサは変身が得意だもの。それにロビーにお礼のドレスを差し上げたいって、昨日から思っていたわ」
リサからそう言われて、ロビーが自然、リサの着ているクリムゾンのドレスに目をやった。
首元までぴったりと腰から上を覆う艶やかな紅い生地が、彼女の身体のラインを隠す事なく包み込んでいて、女のロビーでも思わず見惚れてしまういい女、それがリサ。
顔もロビーのような "いかにも美人です" みたいな造られた量産美形エルフとは別格のオリジナル。口を閉じた澄まし顔から笑顔を見せれば、胸を見えない矢で射抜かれるのは間違いないだろう……
(僕以外はね)
1人合点をしたロビーがドレスから視線を外すと、ロビーの顔をジッと見つめるリサと目が合った。
リサと目が合って狼狽えるロビー。リサのクリムゾンのドレスをうっかり見つめ過ぎていた。
(やばいっ、またリサから服を奪おうと思っているとか、あらぬ疑いをかけられてしまうかも)
「お姉様は紫色、リサは茜色、真っ赤な鮮血に1番近い色のクリムゾン……じゃあロビーは何色なのかしら?」
リサがヘアブラシを置いて、手鏡を持って来てロビーに渡した。リサがとかしたロビーの髪は、魔法がかけられたかのように艶が加わっていた。
「ありがとう、リサ。僕の髪ってこんなに綺麗だっけ?」
リサは微笑むだけで何も答えない。
「ところで、あくまで例え話として聞くけど、もしも僕がリサのフリをするならば、僕は今リサが着ているドレスを着なきゃならないのかな?」
「なぁに? ロビー。その歯に物が挟まったような言い回しは、リサに対する戦線布告なの? リサよりも胸が大きいから、ロビーはリサのドレスがパツンパツンで着ることが出来ないって……だからさっきリサの胸をジッと見ていたの?」
(やっぱり来たっ!! この妄想乙女)
「違うって、ぼ、僕はこんな感じで体は女だけど心は男なんだ。つまり、言いにくいんだけど……ごめん、君の胸に見とれていたのは間違いない。スケベでごめんっ」
「胸なら立派な物がロビーにもあるじゃない。触りたければ自分の物をどうぞお好きに。あなたは昨日女に興味は無いって言ったわ、リサちゃんと覚えているの。ロビーは見るのよっ、リサだって大きいんだから。このドレスで無理やり締め付けているだけなんだから」
(話がどっちの方向に行くのか全く予測がつかないです。全然わかんないタイプ、可愛いのが救いよね)
なんて思っていたら、リサのドレスがスルリと床に脱げ落ちた。
つい、ロビーが手鏡で目の前を遮って見ないようにする。リサは胸に何もつけておらず、見事にはだけていたから……下はちゃんと着ていたけれど。
「ロビー、あなたは女の子だからリサは気にしないの。ロビーも上は外してからベッドから降りて。今からリサのドレスを着せてあげるの、リサの糸で出来たドレスは誰が着てもピッタリになるの」
「リサの糸?」
そう言いながらロビーもブラを外してリサの前に立つ。
「両手を広げて、力を抜いてね。ロビー」
シュルシュルと音はしなかった。しかしロビーの体に巻きついて来るリサの糸はロビーの首元から上半身と腕を包み込んでいって、腰からフワリと広がったフリルが何層にも重なったプリンセスドレスがロビーを包んで行く。
上半身の光沢がある生地の上に同じ色でレースの刺繍を施した、リサが着ていたドレスよりも手の加わった出来上がり。
「出来た、リサと入れ替わるロビー姫の出来上がり。やはりそのドレスを着るとリサよりも胸が小さくなった。リサが勝ちね、知っていたけれどリサの胸はロビーの胸より大きくて形も良くて張りもあって魅力的で……」