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25 ロビー♂と王子様(イケメン)

「うちの地元の花火大会の帰り道みたい」


「毎朝の駅と一緒、ゲームの中で通勤ラッシュに会うとは思わなかったよぉ」


(同感……何これ、夏休みのU○Jですか?)


 アクエリアの城の外門の入り口の前で、全く動かなくなった人の塊の中で白刃のロビーが出来るのは、時折聞こえてくる門の中からのどよめきの声に合わせて、妄想を膨らます事だけだった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


(全く動けなくなったな、ロビー。離れたらわからなくなってしまうだろっ、ほらっもっと近くに来いよっ)


(えっ、いや王子、近い、近いですっ。そんなに近くに寄ってしまうと僕の汗の匂いが……)


(馬鹿っ、気にしないさ。ロビーの匂いだろっ、それにそれを言ったら俺だって汗の匂いがするし、ロビーは嫌なのか? ほらっ)


 ぐいっと王子の腕に引き寄せられて、王子の胸板にロビーの顔が埋まる。


(どうだ? ロビー、俺が嫌か?)


(嫌だなんて、そんなわけ……王子、これが王子の汗の匂い。あぁ、感動)


 ロビーの髪に王子が指を絡めて、髪をとかす。


(人が多くて今日は本当に動かないなぁ)


(僕はこのままでもいいです)


(早く城に帰ってゆっくりしたいな、ロビー)


(はい、一緒に汗を流さないと……)


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「キャー、はずい」


 妄想が膨らんでつい声に出してしまったロビー。


 一方通行の城への道は、道幅いっぱいに人が並んでいて、門の中に入れるの人数に限りがあるので、今のペースでいくと30分に一回前に進む感じだ。ロビーのいる場所は次の番。つまりあと30分間は、王子と城を抜け出して秘密のデートをしている、王子と、王子の恋人〔♂〕の世界に飛ばなくてはならない。


 人混みの中で動けなくて密着する2人。この話を次はどのように発展させて行くか、再び妄想の世界に飛んでいくロビー。


(そうだっ、このギュウギュウ詰めの中で僕が痴漢に遭うって設定にして、王子が僕の事を痴漢から守ってくれてロビーは俺だけのもの……なんて、キャーッ。よしっ、それで行こう)


 ロビーが向かっているのは、2人の姫のお披露目会。しかし、ロビーの頭の中は既に王子様のパートナーを見つける、お見合い会場となっている。


 夢の実現に向けて、まずは会場に乗り込まんとするロビーの顔が赤らんでいるのは、待つ人たちの熱気からでは無く、秘密の王子様が原因である事は誰も知らないのであった。


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