21 森の再生とラヴィ
雷鳴が止むと同時に青空が広がっていく。稲光に包まれていた空間に立ち込めていた、むせるような草いきれを風が流して行った。
「歩けるか?」
なんとか立っているダッジにモフモフうさぎが声をかける。
「俺はなんとか、だけど他の人は結構やばい状態みたいだ」
モンスタートレインの先頭集団に居た残りの7人が、それぞれ肯定するように、手を挙げたり顔だけ動かしたりした。
「モフモフさん、あんた何者なんだ? あれもあんたがやっている事なのか?」
ダッジがモフモフうさぎ越しに谷を見て言った。モフモフうさぎが振り返ると、草が、木が、林が、森が迫って来ている。
破壊と再生、今、目の前で行われているのは再生であった。
「いや、違う。おれじゃ無い、谷が自然に元通りになっていってる」
モンスターに踏み潰され、モフモフうさぎの雷光の刀に掘り返された谷は、以前よりもより緑の濃い森へと変貌していく。
「凄いな、まるで森が生きているみたいだ」
唸るように木が伸びて幹が太くなるのを見ている2人。
「おーいっ、モフモフさーん」
森の再生がモフモフうさぎとダッジの目前まで迫って来ている。その木々の先頭からモフモフうさぎに覚えのある声が聞こえた。
「おーい、モフモフさーん。おーいっ」
(この声って、ラヴィちゃん?)
声はすれど姿は見えない、ただ声は近づいて来ている。
「ラヴィちゃん、どこだー?」
森の再生が止まった。モフモフうさぎの目の前にラヴィアンローズの気配がする。
「久しぶりだね、モフモフさん」
「いや、見えないんだけど。ラヴィちゃん、もしかして魂になってしまったのか? 彷徨える亡霊? 俺の事が見えているのか? 体を失って戻れなくなったんだろ、スワンに言って・・」
モフモフうさぎの目の前の景色が溶けて行く。巻きついた糸がほどけて行くと共に、ラヴィアンローズの姿が現れて来た。
「ラ、ラ、ラ、ラヴィちゃーんっ」
感動のあまり、ラヴィアンローズに抱きついたモフモフうさぎ。感動の再会で抱き合う男二人の姿を見て、
(これが噂のネカマのラヴィか……)
と、変に納得しているダッジであった。
△▽ △▽ △▽ △▽
「みんな怪我をしてる?」
「俺は大丈夫だけど、他の人はモンスターにやられて動けない状態だよ」
「あの雷はモフモフさん?」
「俺というか、ライジングサンがまたやった」
「またって、俺は初めて見たけど、とんでもないね」
「いやいや、透明になってるラヴィちゃんも何気に普通じゃないんだけど。それに、その顔は……」
モフモフうさぎの話を聞いていないのか、ラヴィアンローズが倒れている人の側に座って抱えようとしている。