20 お仕置き
「すねたのか、俺の覚えが悪くて……」
モフモフうさぎに戻った本来のモフモフうさぎが煙の立つ谷を見て呟いた。アイテムドロップの嵐、貴重な石や貴金属のアクセサリーが地面に散らばっってキラキラと反射している光景は、冒険者にとっては夢の様な光景で……
「助けてくれ〜、あれは俺が連れて来たモンスターからのドロップだから、あんたにも少しやる。だから起こしてくれよ〜」
1人の倒れた冒険者がモフモフうさぎに言って来た。周りに倒れている冒険者を見ると、皆、何故か険しい顔をして、モフモフうさぎに声をかけた冒険者の方を睨んでいる。
「あんた、名前は? あんたがモンスターを引っ張って来たんだな」
「そうだよ、俺はハンマーボキッって言うんだ。全部俺のモンスターだ。周りの奴は勝手について来てやられただけで、関係ねえよ。悪いけど早くあんたが拾って来てくれないか。他の奴らに盗られるじゃんか」
「ふざけんなっ」 「馬鹿か、こいつ」・・ザワザワ
「ハンマーボキッ、言いにくいな、ハンマーでいいか? お前がMTを引き起こしたって事だな。自分で言ってるし、周りのみんなの様子を見ても間違いなさそうだ。しかも全く反省の色も無い……」
「はあ? 俺が反省? 何言ってんだ、お前何様だよっ」
「俺か? 俺はお前みたいな奴が大嫌いなモフモフうさぎって言うんだ。別に覚えなくていいぞ、いや寧ろ覚えるなっ」
モフモフうさぎが、近くに落ちていたモンスターからのドロップアイテムの片刃の長剣を拾い上げた。
「それ凄え剣だな、あんたに似合ってるよ。それをやるから頼むよぉ」
「気持ち悪い、反吐が出る」
そう言って、モフモフうさぎが剣を持ってハンマーボキッの側に近づいて行った。
「何すんだよっ? おいっ」
「待てっ、モフモフうさぎさん」
1人の倒れていた冒険者が片膝をついて身を起こしながら言った。
「モフモフうさぎさん、あんたが俺達を助けてくれたのか?」
「まあ、そうかもな……」
信じられないと、首を振りながら後ろに居たはずのモンスターが消えてしまった光景を見ている男達。
「ケリは俺、俺達がつけないと気が済まない。俺の仲間の分もな。モフモフうさぎさんが手を汚して赤ネームになる必要は無いよ。俺が殺る」
モフモフうさぎはその冒険者に手を貸して、立たせた後に長剣を手渡した。
「ありがとう、モフモフさん、て呼んでいいかな?」
モフモフうさぎが頷くのを見ると、冒険者は言った。
「俺はアクエリアのギルド 【ベルベッタ】 のマスター、ダッジだ。文句があるなら俺に言ってこい」
ダッジが長剣を振りかぶる。
「ま、ま、待て、落ち着け、待ってくれ。あの、アイテムはあんたにやるっ、全部、あっ、いや4分の3やるから助けてくれ、なっ、なっ」
ズバッ
振り下ろした長剣を一振りして、ダッジが言った。
「ゴミが……またつまらん物を切ってしまった」