19 雷神、太陽の光
モフモフうさぎがハンマーボキッの前方から消えた。
モフモフうさぎ、影すら米粒のように小さくなる上空にその姿はあった。
その場所からはモンスタートレインの全体像が見る事が出来る。先頭から三角形のような形で連なるモンスターの群れは1匹ずつ倒したのではゲートを守る事など不可能だろう。
モフモフうさぎが両手の剣を太陽にかざした。太陽の光が刀身で強く反射して上空で回転するモフモフうさぎの周りに朧げな光の刀が何十、何百と生まれていく。万を超える光刀が空を埋め尽くした時に、照らされた地上にいる人々は空を見上げてこう思ったに違いない。
眩しい光……まるで雷光が消えずに残ったままでいるみたいだ。
そう、それは正に雷光の眩い輝きの集まりだった。一瞬でモフモフうさぎの周りがその光で埋め尽くされて、もはや地上からは眩しすぎてまともに見る事が出来なくなってしまっている。
「所有者よ……しかと体に刻め。我はライジングサン、雷神が地上に降り注ぐは、太陽の光よ。行くぞ光と共に、フルメンテンペスタージ」
モフモフうさぎが上空で反転した。
地上のモンスターの群れの中心に狙いを定めると、一気に空を蹴って地上に突っ込んだ。
バリバリ、ドォォォォォォンッ
落雷、まさに雷が落ちた。至近距離での落雷に伴う爆音が谷に響き渡る。
モフモフうさぎが上空から突っ込んだ場所の周囲のモンスターが粉々になって弾け飛んで行った。円形にえぐれた地面の中心に立ったモフモフうさぎが、即座に左手の剣を空に向けて、未だ上空で光のオーロラの様に蠢く光刀を地面に落とす。
バリバリ、バッ、バッバババババ
耳をつんざく爆音の雨、光刀が雷光の様に地面のモンスターに落ちて行く。空から襲ってくる脅威にモンスターの群れは隊列を崩し、進む事を忘れて右往左往してそこに再び雷光が突き刺さる。
一撃で落ちた周りのモンスターが4、5体粉々になって吹っ飛ぶ。眩しい光の雨の中をモフモフうさぎはゲートの方へ突き進んで行った。
撃ち漏らしは無い、しかし先頭に居た冒険者達の周りには光刀を落としてはいなかった。爆音の衝撃に足がすくんで走るのをやめた冒険者達が後ろに続いていたモンスターに跳ね飛ばされて、ゴロゴロ転がっていた。
ズバンッ、ズバンッ、ズバッ、ズバッ
スタッと立ち止まって後ろを振り返ると、遥か後方で落雷が続いていた。
モフモフうさぎが足元に倒れている冒険者達を見た。
(敵に背を向けた結末よ。我のせいでは無い)
モフモフうさぎが何か言う前に、ライジングサンが言った。
(確かにな、こいつらがMTを引っ張っていたんだ。自業自得だろうよ。凄い技だったな、カタカナの技の名前……フルメン・なんだっけ?)
(飽いた、後は知らぬ)
ライジングサンがモフモフうさぎのガントレットの姿に戻って、両手に装着された。
「すねたのか、俺の覚えが悪くて……」