113 2人の姫のお披露目②
「では本日の1番の方、前へどうぞっ!」
お披露目会の進行を務める男が、広場に集まったプレイヤーに声を掛けた。
皮製の防具一式を装備して、剣だけ街の鍛冶屋で売っている初期装備よりは少しだけマシな物を持ったヒューマンのプレイヤーが前に出て来た。
「番号札が2番、3番と後に続く方も並んでください」
手伝っているのは臨時バイトの、昨日落選したプレイヤー達……段取りが悪くて進まない事態を昨日は自ら経験済みの連中だ。テキパキとごった返す群衆を参加者と見物人に分けていっている。
1番のプレイヤーが壇上に登る。恭しく片膝をついて剣を床に置き礼をした彼は、目の前の椅子に座る姫に向かって自己紹介を始めた。
「私は、アクエリアのギルド 【夜の豹】所属、剣士AZニャと申します。ロゼッタ様、どうぞ私をあなたの騎士に宜しくお願いします」
「断る」
即決で断られて、なぜか安心したように剣士AZニャは立ち上がって一礼すると、ロゼッタの隣に立って待っている真紅のドレスに身を包んだリサの前に移動した。
リサがスカートの裾を持って、優雅にお辞儀をする。
「堅苦しい挨拶は要らないの。あなたはどんな人なの?」
にっこり笑って先に声を掛けて来たリサをまじまじと見て、AZニャは声を失った。
(リサ様……まじ天使……可愛い)
「次ーっ」
……
「34番の方、どうぞっ」
「はっ、失礼致します」
壇上に上がるのは、他のプレイヤーと比べると少し装備が良いヒューマンの剣士。ロゼッタの前にひざまずくと、胸に手を当てて話始めた。
「私の名はナイトパンサー、この街のギルド 【夜の豹】のマスターを務めている者です。この街が先日凶悪な輩に襲われた時も、真っ先に彼奴らに闘いを挑み見事に勝利を致しました。姫を守るのは私が、私と私のギルド 【夜の豹"】にお任せ下さい。姫に降りかかる火の粉は私が盾となって防ぎましょう」
「我が名はロゼッタ。お前が強いのなら取って来て欲しい物がある、この世のどこかにあると言う龍の目玉。どんな宝石よりも美しく価値があると言われているわ。お前がこのお披露目会の会期内に持って来たら、雇ってやるわ。ナイトパンサーとやら」
「えーっ、ロゼッタ姉様だけずるいの、リサも欲しいの、えっと、リサも……リサも……薔薇の絵、うんっ、この世のどこかにあると言う薔薇の絵が欲しい、凄く欲しいの」
ロゼッタの隣にやって来て、リサも自分の要求を言い出した。
「ええーーーー、それを取って来たら姫の騎士になれるのかーーーー?」
広場から誰かの声が上がった。
ロゼッタが立ち上がって壇上の前に出て来て群衆を見回して言った。
「茶番はおしまいっ。見たところピンっと来る者など居らぬわ、我の欲しい物を探して持って来れば会ってやる。せいぜい励めば良い」
そう言い放って、ロゼッタはクルリと身を翻すとリサの手を引いてさっさと階段を登って王宮に入って行った。
「マジか……あれほんとにNPC?」
「凄えー姉ちゃん。痺れた、欲しい……」
「お前マゾか?」
王宮広場に取り残されたプレイヤー達は、ロゼッタとリサの要求のアイテムについてガヤガヤと話を始めていた。