105 三面鏡
「クエストの目的から説明しよう、少し歩くよ。話しながら行くから聞いてくれ」
(マッテオにクエストなんて言っていいのだろうか?)
「いつからなんだ? 俺が今日、と言ってもリアルの時間で朝10時にログインした時からおかしかった。全部お前が仕組んだ事なのか?」
「全部では無いな。全部では」
「白鳥は神様なのか?」
「神様? モフモフうさぎが言ったのか?」
「願いを叶えてくれるって」
「もうすぐ着く。悪いが話は後でな」
いきなり暗い通路の曲がり角に着いて、直角に左に通路が曲がった。また同じ通路が続くのかと思ったモフモフうさぎの目の前に、巨大な三面鏡が鎮座しているのが見える。
「丁度いい、3人居るから手伝ってくれ」
白鳥が通路を塞ぐように置かれた鏡の正面に立って、右側の鏡にマッテオ、左にモフモフうさぎを配置した。
「で、どうすんだ?」
「マッテオ、あんたの方の鏡の右端に取手があるだろ。そこを持ったらそっちの鏡が動かせるから」
モフモフうさぎが左側の鏡に付いた取手を持って、鏡の角度を変えてみせながら言った。
「モフモフうさぎはもう分かったみたいだな」
「まあな、角度の指示はあんたがするんだろう。マッテオ、三面鏡だ、この鏡の中に道があるんだ」
「また通り抜けるのか?」
マッテオが鏡を手で触ってみる……汚しただけだった。マッテオが服の袖で鏡を拭きながら反射して鏡に映る白鳥の方をみる。
「マッテオ、鏡をもうちょっとこっちへ押してくれ。
うん、そこで止めて。じゃあモフモフうさぎ、鏡をマッテオよりも角度を狭めてくれ、もうちょい、そうそう、そこだっ」
モフモフうさぎの方の鏡を覗き込んでいた白鳥が、鏡から離れて2人を呼んだ。
「絶対に手を離すな。はぐれたら鏡の中に取り込まれるぞ。マッテオは永遠に彷徨う事になるし、モフモフうさぎはリアルの方に戻る方法が死ぬしか無くなる」
「面倒な仕組みだな、テレポートみたいな事は出来ないのか?」
「ここがどこだと思う?」
「わかんねぇよ、どっかの地下道か何かか?」
「王宮へと続く道だ。謎解き要素とスリルが満載なクエストの一部なんだ。王宮に入れるのは資格が必要だし、当然だが外からテレポートして侵入など出来ない」
「王宮、まあどこでもいいわ。早く行って話をしようぜ」
「もっと気分が明るくなる場所でなっ。ちなみにモフモフうさぎ、ついでにマッテオ、君たちは王宮に入る資格を得ているからな」
「その為のクエストだったって事か」
「もう行くぞ、鏡にずらりと自分達が映っている。7番目の自分達が正解だ。左から入って右端から出てくる段取りだから、とにかく手を離すな。それと13番目の自分達とは決して目を合わすなよ。全員引き込まれるぞ」
「13番目?」
「マッテオ、13番目は自分の死に顔だ。だから絶対に見るな。迷信だけど、ここじゃ迷信じゃない。って事だろ」
「やけに詳しいな、モフモフうさぎ」
「まあな、とりあえず白鳥案内よろしく」