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100 無情

 モフモフうさぎの側に寄ると、ムワンッと熱気を感じてマッテオは顔をしかめた。速さも度を過ぎると熱を帯びる。


「おめぇナニモンだよっ。殺るにしても関係ねぇもんまでぶっ壊して澄ました顔をしてやがる」


「違うんだっ、これは」


「モフモフうさぎ、今のおめぇからは何の魅力も感じられねぇ。ラヴィちゃんの足元にも及ばないつまんねぇ奴だ」


 マッテオはそう言い切ると、モフモフうさぎと目を合わせることなく、通り過ぎて行った。


「馬鹿が力を持つと、ロクな事がない。使いこなせぬ道具など捨ててしまえばよいわ」


 美しさの上から冷酷な表情を被ったロゼッタが、モフモフうさぎの前で立ち止まった。


「今のお前ならわたしを殺せる、お前を見ていたら絶望しか感じなくなって来たわ」


 声にならない諦めの微笑を浮かべてロゼッタは(うつむ)いた。止まらない手の震えを必死に抑えるロゼッタ。


「リサが羨ましい。だってあの子は未来を見ていたから。わたしには無いローズという未来があったもの。幸せで終わるとは思っていなくても、ローズが隣に居てくれる未来をリサは夢見てた……でもわたしには無いの」


 グンッ


 と、龍刀を持つモフモフうさぎの左手が持ち上げられた。ロゼッタが見えない糸で操っている。


「壊してわたしを。お願いっうさぎ」


 消えそうな声でロゼッタが言った。


「お願いっうさぎっ、わたしを壊してっ! 殺してっ! リサの所に行きたいの、行きたいの、行きたいの、生きたいの、生きたい、生きたいのっ、わたしはもっと生きたいのっ。本当はもっと生きて」


 一瞬声を荒げて、それを途中でやめたロゼッタは首を振って俯いて、瞳を閉じた。艶やかな唇から漏れる言葉は、人の心を持つ1人の人間と何ら変わる所も無くて。

 紫紺のドレスから露わになった白い肩を震わせてロゼッタは言った。


「リサが幸せならそれでいいの。それを側で見ているだけでわたしも幸せになれると思うから……うさぎ、聞いて。次に逢えたらわたしを」


ズンッ


「えっ、ロゼッタ、やっ、なっ、何をお前」


 最後まで言わずにモフモフうさぎの剣を胸に突き立てたロゼッタが崩れ落ちる。


「何故今なんだよっ、やめろよっ。やめてくれ、もう遅えよ、あぁもう遅えよ。ロゼッタァ、おめぇそんな弱くねぇだろっ」


「私に未来を見せて。うさぎ、駄目?」


 ロゼッタの一筋の血が、モフモフうさぎが左手に持つライジングサンの刀身を伝って、(つば)の龍の口の中に流れ込んで行った。


 モフモフうさぎが首を横に振るのを見届けると、小さな笑顔を浮かべてロゼッタは消えた。

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