9 ステータス見て痺れろ
巴御前と別れた俺は、早速リスポーンゲートの敷地の外に出た。
リスポーンゲートは円形の小さなドーム型の建造物だったんだ。で、その後ろに見える高い山々、とんがっていて頂上辺りには雪を被っている。
(これアルプスの山々みたいだな…… 見た事ないけど)
俺の立っている周りは草原が広がり、なだらかなカーブを描いてかなり先の丘陵地帯へと続いている。
ほんわかとした陽光に包まれた爽やかな風の吹く場所、生まれたばかりの俺達にピッタリな、これからの夢を膨らませる場所。
いやぁ、さすが運営わかってる。両手で四角くフレームを作って覗いてみる。いいアングルだ。ぐるーっと振り返って、はじめまして街!
あらまぁ、でっかい街だこと。
いきなり水上都市だよ。街の至る所から流れ出す水が小さな滝のように見えて、落ちる間に霧となり街の基盤の部分は霞んで見える。
もう、想像を絶する…… ちょっと俺の拙い語彙ではちゃんと伝えられないスケールの大きさ。
(ん〜、一言で説明してみる。この街、水の上でゆっくり回ってる、でいいか?)
スクショが撮れるはず。まっ、まっ、いけねぇ、こんな事してる場合じゃなかった、急いで街の中に行かないと。
走りながら色々出来ることを確認してみる。まずは下を見てみる。
── 右足、左足、右足、左足
「ポワン」て音がした。
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⁂ モフモフうさぎさんからチャット申請が届きました
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(おっ、モフモフさんだ)
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ラヴィアンローズ>さっきぶりでーす
モフモフうさぎ>ラヴィちゃん、ステみた?
── えっ、俺のこと何気に「ラヴィちゃん」って呼んだよな……いつの間に「ちゃん」になったんだよ。ちょっと嬉しいけど、つまり本当の俺を表現してもいいんだな!
ラヴィアンローズ>いや、まだ見ていないわよ
モフモフうさぎ>えっ、そっち?カマのほうで行くん?
ラヴィアンローズ>カマって言わないでよ。もう、これでも傷ついたんだから
モフモフうさぎ>字だけ見てると騙されるわ。面白いからそっちでいいよ。で、ステ見て痺れろ
ラヴィアンローズ>はーい
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ステータスウインドが目の前の風景の中に別窓で浮かび上がって来た。
一応説明するけど、アンタレスONLINEてゲームは、頭で思ったコマンドにちゃんと反応してくれるシステムだった。ただね、もうさっきからシンクロ率が高すぎでやばい。ゲームの中の自分が、ちゃんと地面を感じているし、今も走りながらチャットしてステータスウインドを開いてと、普通に頭で考えるだけで行なっている。キーボードを使って無いよ、今。
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ラヴィアンローズ>ステータスウインドを開いたよ
モフモフうさぎ>経験値見たか?
── えっと、経験値は……