万能の勇者、除名する
正直ノリと勢いだけで書いてるので言葉足らずな所もあるかと思いますが、読んで、そして楽しんでいただけたら幸いです。
「貴様は今日限りでパーティを抜けてもらう」
銀雪の魔王討伐パーティのリーダー、『蒼熱』の二つ名を持つ勇者、エドガー・ジブレイルは対面に立つ男に冷たく告げた。
「異論は認めん、これはパーティの総i「あい解った、では今すぐにでも去ろう」・・・は?」
エドガーが全て言い終わる前に、『万能』の勇者ルシウス・ハールートは口を開いた。
「ではこれまで世話になった皆への餞別だ。この旅で得た金品の全てと、この護石を贈ろう」
「ちょ」「おま」「ぇぇ・・・」「・・・・・・」「貴様ッ話を・・・ッッ」
ルシウスはその場に自らの腰に下げた貨幣の入ったポーチを置き、睨み付けるエドガーなどお構い無しに、他のパーティメンバーに護石を押し付けていく。
そして最後にエドガーの手に無理矢理護石を握らせると、
「さて、これで義理も通した・・・あとは『勇者結約目録』より私の名と契約紋の削除を」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
ルシウスの勢いに煽られ、皆無言で円陣を組みそして右手を突き出す。
すると地面に薄緑に煌く魔術陣が現れる。
陣は光を強めると次第に地を離れ、まるで急速に育つ蔦のように複雑な紋様を延ばし、そして球形の立体魔術陣となった。
ルシウスは紡ぐ。
「我、ルシウス・マールート、以下五名の勇者同意の下、勇者結約目録第十三項に基き目録よりの除名、延いては『万能の勇者』の称号並びに契約紋の削除を申請する」
「・・・・・・我、『蒼熱』エドガー・ジブレイル、ルシウス・マールートの申請に同意する」
「チッ・・・『岩塊』ウーサー・ラファエロ、同意する」
「ン~・・・『黒剣』セブン・アズラエル、同意しまーす」
「どうしようも・・・ないんですね・・・・・・『魁星』マロン・コルワーノ・サリエル・・・同意・・・します」
「『迅影』マミヤ・シャムシェ、同意」
全員が言い終えて数拍のち、立体魔術陣から抑揚の無い、機械的な声が響く。
――『万能の勇者』ルシウス・マールートの申請・・・確認。
勇者結約目録第十三項に法り、五名の勇者よりの同意・・・必要数を確認。
・・・『万能の勇者』ルシウス・マールートへの最終確認・・・本申請が受理された場合、決定は不可逆となり、本件に対する如何なる申し立てが為されたとしても、その全ては無効となります。
・・・本申請に相違無いか?――
ルシウスは軽くため息をつく。そして彼のトレードマークである丸眼鏡から覗く双眸は、三年間苦楽を共にした仲間達を見回した後、静かに瞼を閉じ、そして
「相違無い、私は既に足手纏いだ。このパーティにいる理由は無い。」
未だ納得が行かないメンバーに言い聞かせるように宣言する。
すると魔術陣は輝きを増し、回転を始める。
まるで胎動するかのように明滅を繰り返し回転速度が増していく。
ついには陣の紋様も確認できなくなり、光球と化した魔術陣は天高くへと飛び上がる。
――申請を受理・・・内容を確定。
『ルシウス・マールート』の勇者結約目録よりの除名・・・・・・完了。
称号『万能の勇者』の削除・・・・・・完了。
『万能』の契約紋の削除・・・・・・消滅を確認。――
声が響くと同時に、ルシウスの右手の甲が輝き、柊の葉を象ったような紋様が浮き上がる。
『契約紋』
それは勇者の証であり、持つ者には勇者結約目録を介し様々な恩恵が与えられる、選ばれし者の証。
『人の世界』の賢者達が生み出した英知の結晶であり、魔王並びに魔族と称される者達への切り札でもある。
ルシウスの持つ契約紋が、風に吹き飛ばされる砂の様に、サラサラと光の粒子となって消えていく。
その様子を目を細めながらルシウスは・・・またかつての仲間達は眉間に皺を寄せながら、眺めていた。
――勇者結約目録の再確認・・・・・・・・・・・・該当箇所の削除を確認。
全目録端末への情報更新・・・・・・送信完了。
更新確認・・・・・・・・・・・・全目録端末の情報更新を確認。
本件は正常に処理されました。
繰り返す、本件は正常に処理されました――
シュヴァ剣集めで忙しいので続きは三日後くらいになります。