第4.5話:菊一文字と初めてのガチバトル
今回のは短いです…
修練所へやって来たボクたちは、早速各々模造武器(ボクは武器が変えれないので【菊一文字(非殺傷モード)】)を構えて向かい合っていた。
この修練所は円形で、へたな球場なんかよりよほど広い。
…と、ジェイクさんがボクに向かって武器…【グレードウォリアー(模造)】の切っ先をボクの胸に付けられたブローチに向けてきた。
「キク!!そのブローチはどんだけぶっ叩かれても怪我しない様にしてくれる優れもんだ!!
当たり判定は魔法で出るからポイントがゼロになってブローチが砕けたら敗けだぜ!!
こっちも本気で行くから遠慮無く来いよ!!」
「ええ、勿論本気でいきますよ。
ジェイクさん相手に遠慮していたら簡単に負けちゃいますからね。」
(当然、ジェイクさんに勝てるとは思いませんが。)
「そうこなくちゃな!!
ルールは何でもありだ!!
持てる技全部使って来いッ!!」
「では、審判は私がつとめますね?」
ミーシャさんが修練所の観覧席で立ち上がり、旗を構えた。
「では行きますよー?」
「「・・・。」」
「試合、開始ですッ!!」
「っ!?」
速いッ!!
開始の合図と同時に、大剣使いとは思えない速度で走ってくる…と言うか飛んでくるジェイクさん。
その剣は火を噴いていて、どうやらそれをジェット代わりに使っている様だ。
…模造武器なのになんてデタラメな!;
「盾術【不可視ノ盾】っ!!」
透明な盾を出すスキルを使うと同時にとてつもなく固いものが当たる轟音が響く…!;
「っとぉ!!初撃は防がれたかぁ!!だが終わりじゃねぇぜ!?」
言いながらも次々と大剣を叩き付けてくるジェイクさん、
【不可視ノ盾】は効果時間12秒…のはずだが耐えきれないのか既にヒビが入っている!?;
なら消える前に…!
「ッ!!はぁっ!!【苦無】!」
その盾を壁代わりに蹴って距離をとりつつクナイを投げ、更に―
「【瞬撃】ッ!!」
着地後、走りながら弱い突進技を方向転換で使ってジェイクさんの右側へ―
「ウィンドカッター!!」
「っ!?【飛天】!」
移動した所へ風の刃が襲い来る!!
バックステップしつつ飛び上がる技で何とか回避し―
▼ブーツ効果により無敵化!
「【鳳凰衝】!」
炎を纏う急降下技で反撃に出た!!
が…
「隙だらけだなぁ!?
アクアイレイザー!!」
「っ!!きゃぁぁぁっ!?」
ジェイクさんは水を纏わせた大剣をバットの様に振るう!!
無敵効果時間中のはずなのにぶっ飛ばされて女の子みたいな悲鳴が口をついて出てしまった…
って、今のボクは女の子だった…;
とは言え今は無敵時間、空中で体勢を立て直したボクはカウンターとして各種クナイを投げた!!
「っと!!【曼珠沙華】!【雪月華】!【疾風迅雷】!【草薙刀】!【突貫土竜】!【芭蕉睡蓮】!【白夜乱撃】!【闇夜封月】!」
「ハハッ!!中級魔法剣を受けてこの反撃か!!
こいつは面白れぇっ!!」
本当に楽しそうに笑ったジェイクさんは、大剣を振り回してクナイを弾いていく!!
そして、ボクが着地すると同時にクナイを全て弾いたジェイクさんが愉しそうでいて、凶悪な笑みを浮かべる…!?
それは、あからさまに『今から大技を放ちます』と語っていて…!
「なら!!こいつはどうだっ!?
上級魔法剣!!【 獅 子 炎 撃 覇 《 バ ー ニ ン グ レ オ 》】!!
更に!!【 雷 神 鉄 槌 撃《ト ー ル ハ ン マ ー 》】!!」
「っ!?」
そんなジェイクさんは、一振り目で獅子の形をした炎の塊を正面から、
二振り目で槌の形をした雷の塊をボクの頭上に出現させた!?;
なんて無茶苦茶な…っ!!;
「っはぁぁっ!!」
▼無敵効果発動!
だけどボクには“ブーツ”があるっ!!
フロントステップで思いっきり地を蹴ると一気に前に出てトールハンマーを回避して無敵化し、同時にバーニングレオに突っ込み爆散させながら一気にジェイクさんへ駆ける!!
「【篠衝ク雨】!」
更に無数の光の槍を降らせる技を使いつつ肉薄する!!
「ハッ!!やるじゃねえか!!」
「ぐっ…!」
そのまま斬り込んだ!!
は、良いけれど、ジェイクさんは易々と大剣で受け止め、鍔迫り合いになる…!
こうなると地力の差でボクが圧倒的に不利…だけど…!
「【暴虐ナル嵐】!」
「なんだ!?ッラアッ!」
「あぐっ…!?」
目の前…つまりジェイクさんに嵐を発生させる!!
と同時に無敵時間がきれたのか、ジェイクさんに思いっきり弾かれたボクは後ろに吹っ飛んでしまう…!
そして、数回バウンドしながら地面を転がり―
「グガッ!?」
突如隆起した地面に打ち上げられ―
「っ!?―
雷に撃ち抜かれ―
「――――
風に斬り刻まれた…。
瞬間、つけていたブローチが砕け散る…
「―っと!;
すまねぇっ!!;やり過ぎた!!;」
力を失って落下してきたボクをしっかりキャッチしたジェイクさんは、焦った表情でボクを覗き込んで来たので、ブローチのお陰で実質無傷なボクは彼を安心させる様に微笑んだ。
「…大丈夫ですよ…やはりジェイクさんはお強いですね…。」
「っ…!?///」
…あれ?
ジェイクさんは何故真っ赤に…?
「とりあえず怪我がないかステラに診てもらおう!!」
「すみません…
因に、今ボクはジェイクさんに横抱き…と言うか、“お姫様抱っこ”をされているが、嫌悪感等は全くなかった…心的には男同士なのに不思議だなぁ…寧ろ―
「…お父さん…
「…!」
「あっ…いえ…ごめんなさい…ボク―
お父さんの温もり…みたいなものを感じてしまった…
けど、ジェイクさんはボクのお父さんじゃないし、それどころかボク位の娘が居たらおかしい年齢だ。
失礼だと思って謝ろうとしたら…
「フッ…遠慮すんなよキク。
お前だって、もう俺様の娘みたいなもんだ。」
そう言って、嬉しそうに笑ってくれた…
もぅ…ジェイクさんって、本当に………
「・・・ありがとう…“お父さん”…。」
「おうっ♪機会があればまた戦おうぜ!!」
「・・・・・。」
「どうした?キク。」
「いえ…大好きです、お父さん♪」
「っ!?///」
あれ?また真っ赤に…
大丈夫なのかな?ジェイクさん。
…この時、ようやくボクも吹っ切れたのかも知れない…
前世の事は、前世の事…
どれだけねがったって…もう、みんなにはあえないのだから……………
それでも、今のボクも、ひとりぼっちじゃない。
「…ふぅん…あれが、【菊一文字】か…。」
ただ、ボクは知らなかった。
そんな幸せも、決して、無限のものでも、確実なものでもなく。
この世界での両親とも言える二人との別れが迫っている事を…