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第1.5話:もうひとつのプロローグ

…ん…ぅ…?

ふぁぁ…



「おはよぉぅ…



あれ…?

何だか寒い…。



「あ…そっかぁ…わたし…今ダンジョンに来てるんだったぁ…



わたしはカノン。

今年で10歳になった新米冒険者!

わたしのお父さんとお母さんも冒険者だったんだけど…ある日をさかいに帰ってこなくなっちゃったの…

だから、わたしはふたりを探すために冒険者になった!!

・・・ギルドでの能力測定では平均以下って出されちゃったけど。

でも、優しい受付のお姉さんがわたし向けのクエストを用意してくれていたからなんとかLv.13まで上げれたの!!

そんなわたしは、チームプレーを覚えた方が良いっていうお姉さんのアドバイスに従って、他の冒険者さん達とパーティーを組んでこのダンジョンにやって来たんだった…!


でも…おかしいな…?誰も居ないよ…??

それに…わたしの装備品はどこ………?


しばらくして、頭がハッキリとしてくると、わたしは嫌な予感がした…!



「もしかして…みんな魔物に…?」



…なんて事は、無いと、いくらわたしでも分かったの…

きっとわたしは…弱くてお荷物だから捨てられたんだ…って…

時間がたつと、段々とそれがハッキリとした確信に変わっていって…

悲しくなってきた…



「でも…だからって…ひどいよ…うぅ…うぁぁぁん…!!」



ダンジョンで不必要に大声を上げてはいけない。

そんな事は分かっていても、止められなかった…

お気に入りのリボンと、その予備である同じリボン、それ以外の全てを失ってしまった事、裏切られた事、全部がごちゃまぜになって、わたしの心はぐちゃぐちゃだった…


でも、そんな事をしていたら、嫌でも魔物が集まってくる…!


ここはダンジョンでもそこそこ深いところ。

集まってくるのはゴブリンやコボルト、ウルフやキャタピラーなんていう、それなりに強い魔物達…ただでさえ能力が低いのに、ほぼ裸な今のわたしには、一対一でも絶対に勝てない敵…!


わたしは本能的にその場から出口へ向かって逃げ出した!!

でも、当然の様に追ってくる魔物達…!!



「ふぇぇぇん…!」



何で!

どうして!

わたしがこんな目にあわなくちゃならないの!?


そんな事が頭の中をぐるぐると回る…


だけれど、魔物達との距離はあっという間に無くなり―


「ふぇ―



―瞬間、何かを踏んだみたいで、わたしの身体が浮遊感に包まれた…!

これは、転移系の罠…!?












―ぇぅっ…!」



浮遊感が無くなって、地面に叩き付けられたわたしは…真っ白なお部屋に跳ばされていた…

魔物は居ない…でも、出口もない…そんな真っ白なお部屋に跳ばされてしまった絶望から、わたしはまた涙が溢れてきた…



「うっ…ぐしゅ…これからどうしよぅ…装備品は何もない…お金もアイテムも全部盗られた…偶々転移罠にまったからモンスターからは逃げれたけど…えぐぅっ…



しばらくそうして泣いていたけれど、ふと視線を感じて顔を上げたの…そしたら…



「きゅっ…!?」


「…。」



お水で満たされた透明なボールの中に居る、きれいな白銀の髪に、蒼と翠の瞳をしたはだかのお姉さんが…わたしに向かって微笑んで…い…て…?



「きゅ~っ!!?

はだかの女の子!?あなた大丈夫なの!?

はっ、早く出してあげないと…!」



でもどうやって!?

なんて慌てていたら、また変なスイッチを押してしまった!!

すると、ボールが割れて、お姉さんが流れ出てきて…そしたら服を着てわたしとおんなじお耳が生えて…!?

白銀の毛色だから…白狐族のお姉さんだったんだ!?

そんなお姉さんに駆け寄ったわたしは、お姉さんが怪我をして無いか心配になったの。



「…ふぅ。

呼吸は普通に出来るんだ。」


「あわわっ…大丈夫なの…?」


「ん…?

あぁ、ありがとう主様。

ボクはこの通り、何ともないよ。」



そんな、きれいな白狐族のお姉さんが、またわたしに優しい笑顔を浮かべて、主様っ…て…



「えっ!?

主…様…って…?わたしが…?」


「そう、キミが最初にボクを目覚めさせた。

だからキミがボクの主様だ。

ボクの名前は【キクイチモンジ】、これから宜しくね?」


「あっ…うん…わたしは【カノン】、よろしくね、キクイチモンジさん…?」



お姉さんだから、さん付けの方が良いよね…?

そう思ったけれど、お姉さんは笑顔のまま―



「長いから【キク】って呼び捨てでも良いよ?」



そんな提案をしてきた、でも…



「えっ…でも、キクイチモンジさんの方が年上っぽいし…


「なら、キクちゃんならどう?

ボクもキミの事はカノンちゃんって呼ぶから。」


「あっ…それなら…うんっ♪宜しくね、キクちゃん!!」



ちゃん付け…わたしもキクイチモンジさん…キクちゃんもお互いにそれで呼ぶなら…良いかな…?

そう呼んだら、キクちゃんも嬉しそうに微笑んでくれた。



「ふふっ…宜しくね、カノンちゃん。

じゃあ、契約の証として、接吻…キスを、しよう。」


「えっ!?///」



キス!?

キス…って…あの…お父さんとお母さんが毎日していた、口と口をくっつける…アレだよね…?

わたしが恥ずかしがっていると、キクちゃんは急に寂しそうな顔になっちゃって…



「…イヤかい…?」


「うっ…ううん…優しく…してね…?///」


「…大丈夫、力を抜いて―



キクちゃんにそんな顔をしてもらいたくない!!

そう思ったわたしは、キクちゃんのキスを受け入れた…の…



これが…わたしと、キクお姉ちゃんの出逢い…

わたしにとって、大切な、とっても大切な人になる、お姉さんとの出逢いだった。




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