第14話:菊一文字と大好きな家族達
またボチボチ更新していきます。
ー!」
次に気付くと、そこは、元居たギルティダンジョンで…
目の前には僕の刀を必死の形相で受け止める…ボロボロの父さんが居た。
「ッ!ラァァァッ!!目ェ覚ませキクぅぅぅ!!俺様が誰か!忘れたかァァ!!!」
「っ!?」
「ジェイクッ!エクストラアタック!」
目覚めて直ぐだったのか力が抜けた僕を弾き飛ばした父さんが、追撃しようと僕に肉薄する。
その、傍らには真剣な顔の母さん、泣き顔のカノンちゃん……
傷だらけでも立ち向かうキリトさんに、フラフラになりながらも気力で睨みつけてくるレイナさん…………
あぁ……僕は…大切な家族に……仲間達に……なんて顔を…………
『どうしたのかな菊一文字!もうその人間は虫の息だよ!さっさと殺しちゃえ♪』
「…っ。」
「オラァッ!
キクぅ…俺様はなぁ……お前になんか殺されてやらねぇぞ……!
必ずお前を正気に戻してやるからなぁ………!!」
母さんの支援魔法を受けて突進してきた父さんは…だけど、技を放つ事はなく、力任せに鍔迫り合いに持ち込んでくる………
もう、技を放つ気力は無いのかもしれない……
そんな父さんの様子を見て、喜色を浮かべて楽しげな声を上げる村正……
その声…イライラする………嫌いだ………
だから、僕は声を潜めて父さんに話しかける………
「……父さん……。」
「っ!?」
「父さん…ごめん…ごめんなさい………ううっ……
「……キク…?」
本当は今すぐ父さんに抱きつきたい。
その、父さんの逞しい体に抱きついて安心したい。
母さんの優しさに触れたい。
希夜の無事を確かめたい。
なにより、カノンの暖かさを感じたい………!
だけど、今は…!
「ー【燕返し】ッ!」
『なっ!?』
「キ…キク……!!」
父さんが力を弛めた瞬間、振り向きざまに村正へ一閃。
油断していた村正は斬撃をモロにくらい、ふらつき、致命傷だったのが消滅した。
いや、あっさり過ぎるし、恐らく分身かナニカだったのかもしれない。
残心を解き、刀を鞘へ納めると、直ぐに父さんに抱き寄せられた…!?
「っ…!キクテメェ馬鹿野郎!!…なんつー無茶をしやがる……!」
「父さん…心配かけてごめん………
「全くだぞコノヤロー!!」
「全く、悪い子ね…!後でおしおきよ?」
「母さんもごめん………
父さんと母さんに心配をかけたことを謝ると、2人はワザと茶化すように殊更明るい声で返してきた………
本当に……いい人達…だよね。
「……どうやら、正気に戻ったようだね。」
「全く……ヒヤヒヤしたわ………
「あっ…キリトさんにレイナさんも、ご迷惑をお掛けしました………本来であれば護衛対象である皆さんに僕が、攻撃を仕掛けるなんて………
「いや、さっきまで操られていたのだろうから気にしないでくれ。なぁレイナ?」
「ええ、正気に戻ってくれたなら良いわよ……はぁ…………
キリトさん達も……いい人達だよ………本当にごめんなさい。
「お姉ちゃん………
「カノン…
父さんと母さんに後ろから抱きしめられ、
正面からは満身創痍なキリトさんとレイナさんに頭を撫で回されるのを、されるがままになっていると、
カノンが、僕の大切な主様が、おずおずと近付いてきた………
「お姉ちゃん………!!」
「…ごめんね、カノン…ただいま。」
「うぁぁあん!!お姉ちゃぁぁぁぁぁん………!!」
「よしよし…………
父さんと母さんは察して僕を放してくれて、キリトさんとレイナさんも脇に退くと、カノンが飛び付いてきた!
僕はカノンをしっかりと受け止め、頭を撫でる。
「もう大丈夫だよ。カノン………僕は、僕なんだ。」
そう、僕が、菊一文字なんだ。
そうだろう?元々の菊一文字。
(当然ですよ。キミはボクで、ボクはキミです。
キミこそが菊一文字。ボクこそが菊一文字!
だから胸張って【菊一文字】を名乗りなさい。
それにしてもやっぱりカノンちゃんモフモフで気持ちいですね!)
全く…君って奴は………;
「……あっ!そうだ希夜は!?」
「はぁ……はぁ………案ずるな…キクの字……キヨならここだ………ふぅぅぅ…………
「ルドルフさん………!」
どうやら、キヨは気絶したみたいだ。
ぐったりとして、ルドルフさんに背負われている。
その傍らには父親であるルドルフさんに寄り添うエミリーと、
ビショップとしてルドルフさんに治癒魔法をかけるミーシャさんが居た。
ルドルフさんは、1度希夜を地面に降ろし、自分の上着を敷いてから優しく希夜を寝かせると僕に向き直った。
「お主がジェイクやステラに襲いかかっているのを見た時はヒヤヒヤしたぞ。」
「あ…その節は本当に申し訳ございません………
下手したらルドルフさん…死んでいたかもしれないんだ……
でも、そのルドルフさんは厳つい顔をニヤリと歪ませて続けた。
「全くだ、まだワシの自慢のケーキを食わせとらんと言うに。」
「えっ…?怒って…無いのですか…?」
「うむ、ワシは知っておるからな。
お主はただ村正に操られとっただけ、刀型武具精霊であるお主では抗う術は無いのだから何も悪くないぞ。
むしろ、よく戻ってきてくれた。」
「ルドルフ…さん…………
「キクっちが真っ先に正気に戻るなんてびっくりっすね!
いやぁ~やっぱりシスコンなロリ一文字は違うっすなぁ!」
「エミリー……
「とにかく、キクちゃんが元に戻ってくれただけで私は嬉しいです♪」
「ミーシャ…
もうなんなのブレッドファミリアの人達は……!
真性の善人過ぎるよ………!!
思わず僕は顔を両手で覆って泣き崩れた………
抱きついていたカノンが、側に来た父さんが、僕の頭を撫でてくれる感覚がする………
あぁ……よかった……ブレッドファミリアの皆が無事で…………
本当によかった………
アルト達も、大丈夫なのかな……
そう思った直後に、周囲を警戒していた3人も寄ってきた。
「キクさんは大丈夫なのか…?」
「キクさん……
「キクさんっ!」
「アルト…リィン…アリス………ごめん……ごめんね………
「いや、俺達は無事だったし、兄さんも割と平気そうだから問題ないさ。」
「んっ。気にしないで、キクさんは、悪くない。」
「申し訳なく思うのなら、私に尻尾をモフらせなさないな♪」
あぁ………3人も……無事みたいで本当によかった………
パチパチパチ……
と、胸をなでおろしたのもつかの間、
わざとらしい拍手が部屋に響いた。
「いやぁ、素晴らしい家族愛と友愛だなぁ?」
「ッ…!ドレイク…!!」
「………!」
そこには、このギルティダンジョンの主で、僕達が討伐しようとしていたドレイク(…と、父さんが呼んだからそうなのだろう)が、いつの間にか居た。
忘れていた……訳では無い………ここはギルティダンジョンなんだから…………
でも……よりによって今だなんて………!
違う………
最初からこれを狙っていた……?
瞬間、僕と父さんだけが皆から隔離された。
僕は咄嗟にカノンを母さんの方へ突き飛ばしたから、カノンは巻き込まれていない。
……カノンを、巻き込む訳には行かない………!
今、この場においては父さんと僕とドレイクだけになっていた。
仕方ない。満身創痍な皆を巻き込まれないのならヨシ、とばかりに2人でわざと見逃したのだし。
「ふはははははは!!いくら天下のブレッドファミリアのボスであるジェイクだろうと!村正と戦えばタダではすまないと睨んで正解だったな!
仲間に刀の武具精霊が居たのも俺にとっちゃ僥倖だなぁ!!
ふはは…まぁ、劣化コピーとは言え村正を倒すとは思わなかったがな?」
クッ…ニヤニヤと下卑た笑みを………!
そうか……妙に弱いと思ったらさっきのは贋作村正…だったのか……
贋作村正に父さんを消耗させてから仕留めるつもりだったんだ。
あわよくば、贋作村正に父さんを倒してもらおうとしていたのか……
相手の思惑通り、父さんはボロボロだ……
…それでも、父さんは不敵に笑ってみせた。
「ハァァ?この俺様が本当に満身創痍だとでも思ってんのか?」
「強がりはよせよジェイクゥ!
こちとらテメェが既に技も使えない程精神力や魔力を消耗してるのは分かってるんだぜぇ?」
………ん?
果たしてそれはどうなのかなぁ…………?
ドレイクの奴は勝利を確信してるのかお喋りに夢中だ。
ならば………
僕は、こっそりとストレージからとあるアイテムを取り出した。
「…と、父さん…。」
そして、"ソレ"を父さんに貼り付ける。
なるべく肌が露出してるところがいいし、怯えて父さんにしがみつく娘を演じつつ父さんの二の腕に。
そして、手を移動させつつもう1枚別のを取り出して父さんの肘から先にペタリ。
ちょっとくすぐったそうだけど、父さんは僕を安心させるように反対の手で僕の頭を撫でながらドレイクとの舌戦に興じる。
「ーにしても何でテメェの周りにばかり美女が集まるのかねぇ?
まぁ、テメェをぶっ殺した後でじっくり嬲り殺しにしてやるがなぁ!!」
「ッラァァッ!!」
「グヌゥゥッ!?」
そして、父さんはドレイクに斬り掛かった!
うん。
予想通り、父さんはまだまだ余力は残ってたんだ。
だからこそ、僕は回復アイテムである《貼る大治癒功》と《貼る大錬気功》を貼り付けた。本当に疲れきってしまう前に。
そして、アイテムの効果により父さんには、体力回復と魔力回復が付与される。
このアイテムのミソは、"本来は装備品である為効果は永久"である事。
なんだか装備枠の制限がよく分からない。
護符だからなのかなぁ?
さぁ、何はともあれギルティダンジョンでのラストバトルだ……!
次回も未定です………




