第11話:菊一文字と“家族”達
不定期更新…
話の軸がブレてなぁい…?;
翌朝、やはり根本が変わってしまったらしい僕は感覚がズレにズレていた…
「お姉ちゃんおはよぉ…
「おはよう、カノン。」
「…んぅ…?
今日のお姉ちゃんは甘えんぼさんだねぇ…?
でも、ぎゅ~ってしてくれて嬉しいなぁ…♪」
と、寝起きでカノンの髪に顔をうめる様に、いつもより深く抱き締めると言う失態から始まり…
「おはよう、父さん、母さん。」
「おう。
…キク、何か雰囲気変わったな??」
「そもそも、私達をそう呼んでいたかしら??」
と、口調が変わった事を指摘され…
「―あ、ミーシャ、朝からご苦労様。」
「えっ…?呼び捨て…ですか?
・・・あら、貴女の魂…変化が見られますね…貴女はもしや―
「っ!;では僕はこれで。」
うっかりミーシャを呼び捨てにしてしまい…
「エッエミリー!?///」
「ん?どうしたっすかキクっち。」
「いやあの…はだ…裸…!!///」
「あー、朝風呂に入ってたっす♪キクっちもどうっすか?」
「けっ、結構ですー!!!///」
「…?女の子同士なのに、変なキクっちっすねー…??」
挙げ句の果てには風呂上がりのエミリーに遭遇すると言うハプニング…
何故今日に限って狙った様にこんなことが起こるのか…
「うーあー………
「朝から疲れてんなーお姉様…;」
そんなこんなで精神的にぐったりして僕は街中の噴水前のベンチでグデッとしていたら、僕の様子を見に来てくれたらしい希夜が僕の頭の近くにしゃがんだ。
…関係無いけど今の希夜の格好がミニスカートな着物ドレスだからしゃがんだ事で下着が丸見えだ。
見た目が大人っぽいのに下着は水色ストライプのしまぱんなんだなぁ…と言うかあったんだ、しまぱん。
………うん、思考が穢れてるっていうか頭沸いてるね。
「希夜ぉ…僕はダメな菊一文字だぁ…
「そうかぁ?アタシはお姉様しか知らないけど、本来の菊一文字ってなんだよ??」
「……敬語口調の清楚系ボクっ娘?」
「ごめん意味分からんわ…;」
「とりあえず昨日までの僕が本来の菊一文字…だと思う………
「ふぅん……アタシ的にゃありのままになってる今のお姉様の方が好みだがなぁ…?」
「ははは…まぁ、希夜がそう言ってくれるのは嬉しいけどさ…
でも、僕は何処まで行っても【菊一文字】の身体を奪っちゃったナニモノカ…なんだよ……」
いや、自分でも分かってるんだ。
ウダウダ言ったって過去は変わらないし、この身体が菊一文字だろうと僕が僕である事は変わらない何て事はさ…
そんなボクを見つめる希夜は苦笑いだ。
「お姉様、答えが出てるのに何故悩むんだ?」
「えっ…?」
「お姉様も同じだろ?“お姉様はお姉様”なんだよ。“アタシはアタシ”で在るように。」
「そりゃあ…まぁ……
「………なんだかなぁ…;
お姉様、元男のはずなのに女々しいな…?;」
「ぐはっ!?」
「うじうじすんなよお姉様!!
誰が何と言おうと間違いなく今のお姉様が【菊一文字】なんだからな!?」
………いやまぁ分かってるけどさぁ…;
ただ、今更“僕”が目覚めちゃったから決着がついたはずの事象がぶり返してるだけで…;
「はぁ………まっ、そもそも今はそんな事に悩んでる場合じゃ無かったね…
冒険者ギルドマスターを、倒しに行かなきゃ…なんだし…
「……そうだな。お姉様を無駄に悩ませる様な奴は成敗だぜ。」
もうね、八つ当たりも良いとこだよ!!
でもハッキリ言って 僕 は 悪 く ね ぇ っ !!
「そうと決まれば希夜、父さん達と作戦会議だ!!」
「おうよ!!」
早速父さん達に声を掛けて集まった僕達はギルドマスター討伐について話始めた訳だけど……
「―俺様は奴を…この街の冒険者ギルドマスター、【ドレイク】をよーく知っている。
何せ奴とは因縁が深いからな。」
…んっ!?;
あははー…いやぁ…ドレイクさんって…僕の居た世界では有名な格好いい人じゃなかったっけ?;
まぁ、所謂同名の別人なんだろうなぁ…
とにかく、父さんの話を聞こう。
「奴は金と名声、それと女に執着するゲス野郎だ。
丁度俺様と真逆だからな、これまでも度々衝突してきた。」
「そうねぇ…貧困の村を救う処か全員奴隷として売り飛ばしたり、遺跡探索の成果を横取りしたり…彼の悪行を上げたらキリがないわ…
「そんな中で俺様が何より許せないのは俺様のステラを奪おうとした事だ!」
そう叫んだ父さんは正に腹立たしいと言った様子で机を殴った…
本来は何だかんだ言っても快活に笑い飛ばしちゃう父さんがこんなに怒るなんて…と言うか、机が壊れた…父さん力強い…;
あ、母さんがササッと魔法で直した!?この世界の魔法は万能だねぇ!?;
「おっと、すまねぇステラ…
「気にしないでジェイク、怒ってくれて嬉しいから♪」
「…コホン…どうしても俺様の主観が入っちまうが、奴は間違いなく大罪人だ…。」
「そうね、それだけでなく、私達【ブレッドファミリア】の活動を度々邪魔してきたりして鬱陶しいのよねぇ…
「とにかく、俺様の知るドレイクの野郎は狡猾で金と名声と女に執着するゲス野郎…だな。
キリトを操り、アルト達を亡き者にしようとしたのも金が目的の面もあるだろう。」
「そんなドレイクには下手な小細工はかえって逆に利用されかねないわ。
だからと言って、無策で勝てる相手でも無いのだけれど…」
「今回の件で判ったのはあの野郎は洗脳系のアーティファクトを所持してるかもしれねぇ事だ。
当然、そうなってくるとこっちが洗脳されちまう。」
「アーティファクト…?」
そこでピンと来たのは、昨日の夜、僕と希夜が相対した冒険者共が所持していた銃の様なナニか…
僕はストレージから希夜が回収していた銃を取り出した。
「父さん…もしかしたらアーティファクトってこれの事??」
「ん?なんだそりゃ??」
「アタシとお姉様が巡回中に出くわした冒険者共から奪い取った物だぜ。」
「・・・!」
その銃を見たステラさんは目を見開いた…?
「そう…やっぱり…………
それからすぐに何かを諦めた表情になった母さんは―
「貴女はダレ?」
そう言って、黒猫ステッキを僕の方に向けてきた!?
それと同時に僕を隔離する様に現れる結界…
「…母さん…?」
「お母さん!?キクお姉ちゃんに何するの!?」
「………ごめんなさい、カノンちゃん…
キクちゃんの姿をした貴女は、私達の知る【キクちゃん】じゃないわね?
正体を見せなさいッ!!」
「ッ!!」
ステラさんの魔法が僕に炸裂する!!
…どうやら攻撃魔法では無かったみたいだけれど、それでも結界で逃げれなくなっていた僕はモロに魔法を受け、身体が作り変わっていく…!
「あがっ…!
うぁぁぁぁぁぁあっ!?
ぐぅぅっ…ああーっ!!」
僕の口から…今まで以上の甲高い声が発せられる…
身体中が焼けるように熱い…
そして激痛が走る…
ゴキゴキと不気味な音を立てて僕の骨格は作り替えられていき…………
「うヴ…グァァァッ!?
ガハッ……ハァ…ハぁ…はぁ……
痛みが収まると、僕の身体は――――――――
「・・・はい?;」
「…あら…?」
「わぁ~!お姉ちゃんかっこ可愛い♪」
「………大人になった?」
『えーっ!?』
『はぁぁーっ!?;』
「わぉ。」
丁度僕をうつす様に置いてあった姿見を見ると、そこには……
前髪に薄く青みがかったメッシュと赤みがかったメッシュが入った白銀のロングヘア、
身長が伸び、引き締まったしなやかな身体…所謂アストリート体型、
穏和そうな雰囲気は鳴りを潜め、アーモンド型の瞳にスッとした鼻梁、薄いながらも柔らかそうな唇…そんな“クールビューティー”と言う表現が似合いそうな顔立ちで、瞳の色は僕が未だに菊一文字である事を示すように右目が蒼、左目が翠のオッドアイ。
そして、狐耳と尻尾は据え置き。
そんな“クールビューティー狐っ娘”がそこにいた。
「…これが、僕…?」
「定番ネタっすねー。普通は女装した時の台詞っすが。」
「いや、何でエミリーがソレを知ってるの?」
「おー、中身は変わらないっすな♪」
「はぁ………
まぁ、エミリーはこの場を和ませる為にわざと茶化したんだろうなぁ…
続いて、ミーシャが僕の前に立ってマジマジと見てくる…
「うーん…確かに、今のキクちゃんの方が雰囲気と見た目がマッチしていますね?
ただ、その見た目で一人称が“僕”なのはいただけませんが。」
「それはまぁ…僕は僕らしくって事でどうかな?ミーシャ。」
「あらあら……成長しましたね、キクさん。」
…ミーシャもきっと、朝に会った時点で気付いていたんだろうな…
どうやら、僕のこの変化は成長によるもの…だと思っているみたいだけれど。
…と、今度は母さんが僕をジッと見てくる…
その表情は僕が見せた銃がナニかを知っていて、それでも尚、変質したはずの僕が未だに味方である事に疑問を持っている様子だった…
「…ねぇ、キクちゃん。」
「何かな母さん。」
「貴女は…『書き換えられた』んじゃないのよね…?」
「書き換えられた…?」
思わずおうむ返しすると、母さんは銃を手に取り、自分の魔力を注いだソレについて教えてくれた。
「これはね、精霊の主を強制的に書き換えるアーティファクト、【スピッツチャーム】なのよ。
撃たれた精霊は、人格と記憶を破壊され、この銃に登録された魔力を持つ人物に従順な、生きるキカイとなるの。」
「…なに、そのクズいアーティファクト。」
「…そうね、でも本来は自我を失った暴走精霊に対抗する為の護身具なのよ?
それに、正しく使えば『自我を取り戻させる』だけにも出来るの。」
「そうだったんだ…
「ええ。
まぁ、今は私の魔力を注ぎ直して効果もその『自我を取り戻させる』に書き換えたけれど。」
「え…?」
「今の効果は【操り・洗脳・魅了無効】よ。
この銃を上に向かって撃てば、私の魔力が味方に降り注いで、浴びた精霊が【スピッツチャーム】状態になるのを一回、防いでくれるわ。
【スピッツチャーム】状態になってしまった精霊の治療も可能よ。」
「あっ、じゃあこれで…
「ええ。もうこのアーティファクトは怖くないわ。
……貴女は、ちゃんと私達のキク、なのよね?」
「あ…………
そうだよ、僕はちゃんと、貴女の娘…菊一文字のままだ。
色々と変わってしまったけれど、それだけは、変わらない。」
「…ええ。」
そう言いながら、母さんを抱き締めると、父さんは珍しく腹立たしげに立ち上がり、母さんごと僕を抱き締めてきた。
「許せねぇ…俺様のステラだけでなく、娘にまで手を出しやがって…!
ドレイクの奴に俺様を怒らせたらどうなるか、キッチリ教えてやらねぇとなぁ……!」
―と言う訳で、僕をこんなにしてくれちゃったお礼も兼ねてやって来ましたよ。
ミュラの冒険者ギルドマスターが居るらしい街外れのお屋敷に!!
……来たはずなんだけど完全にダンジョンっぽい。
お屋敷がダンジョン化したのかな…?
僕の中にある知識だと……
住んでいる場所…或いは縁の深い場所がダンジョン化するって事は、そこの主は相当に悪行を積み重ねて業が深いって事になるみたいだね。
「父さん…
「ははっ、心配すんなよキク!!俺様達がついてるだろ?」
「そうよ~キクちゃん、私達が強いこと、キクちゃんならよく知っているでしょう?」
「そうだぜお姉様!!
アタシやカノンだっているんだ!!それに、他の奴等もな♪」
「お姉ちゃんが怖がっていると、その…わたしも恐くなっちゃうかなぁ…なんて…///」
「…ははは…。」
もぉ…皆本当にぐぅ聖なんだから………
なんでこんなにも温かいのさ…僕が、昨日までの僕と違うって気付いているだろうに………
そんな事はお見通しだとばかりに父さんが僕の頭に手を置いてワシャワシャと乱暴に撫でてくる…
「…キクは。誰が何と言おうと俺様とステラの娘だ。それだけは忘れんな。」
それだけ言うと、リーダーとしての表情になった父さんは、大剣を掲げて他の皆にも聞こえる様に大声を張り上げる。
「行くぜ野郎共!!
目標はギルドマスター【ドレイク】だ!!各チームノワールが作成した地図を頼りにダンジョン攻略しながらマスターの首を盗りに行けッ!!」
『 オ オ ー ッ ! ! 』
………今更だけど、大声を張り上げるとか盗賊なのに隠れる気ゼロ!?;




