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羊の皮を被るのなんてやめたらいいのに
慣れというのは恐ろしいもの。
始めこそ『じ~さん』というあだ名に難色を示した羊でしたが、時がそれを許しました。
冗談を言い合い、互いを尊重し、守り合い、月日が流れていったのです。
じ~さんとみーちゃんの日常はポカポカしたものでした。
傍から見れば、二匹の羊です。しかし、それは違うのだと二匹は忘れませんでした。
じ~さんは時折、みーちゃんに言いました。
「もう、羊の皮を被るのなんてやめたらいいのに」
みーちゃんは言います。
「かわいい羊さんでいたいの」
じ~さんは無理に羊の皮を剥がそうとはしませんでした。
じ~さんが草を食べている間、みーちゃんは食事をしません。
みーちゃんはどこかで、こっそりと血で口を汚さないように食べているようでした。
そんな、ある日のことです。