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羊の皮を被った狼
「ねぇ、ここの草がおいしいよ」
「一緒に食べようよ」
たくさんの羊が声をかけてくれました。
「ありがとう。でもね、お腹がいっぱいなの」
姿を変えてから、たくさんの羊が友だちになってくれました。
羊の群れにいるのが自然で、狼たちのもとに帰ることはなくなっていました。
「きゃ~!」
時折り聞こえる友だちの声に、羊の皮を被った狼はすぐさま駆けつけます。
「逃げて、私が追い払うから!」
「でも……」
「大丈夫だから、はやく!」
友だちの羊たちが逃げていき、群れが遠ざかっていく中、羊の皮を被った狼は様々な獣たちを追い払いました。
友だちが見ていないからこそ、本当の姿をさらけ出して。
獣たちが去ったあと、また狼は羊の皮を被ります。
そして、忘れていた空腹を思い出し、こっそりと食事をとりに行き、また羊の群れへと戻るのでした。