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狼の警告
「私たちを食べようって言うなら、そうはいかないわ」
「なんだ? こいつ」
一匹の狼が顔を上げます。
「あなたたち、狼でしょ? それなら、私も同じだと……匂いでわかるはずよ」
みーちゃんはキッと睨みつけます。
二匹の狼は顔を見合わせました。
「わからないなら、見せてあげる」
耳を、額を──いいえ、顔すべてをみーちゃんは出しました。
それは、まさしく狼の顔です。
「お前……」
「わかった。こちらが引き下がる。ただ、ひとつ警告してやる」
「なによ?」
乾いた風が二匹の狼とみーちゃんの間を裂きました。
「お前が発している匂いは狼の匂いじゃない。……死臭だ」
二匹の狼は、みーちゃんに背中を向けて歩いて行きました。
一方、じ~さんはみーちゃんを追いかけていました。
待ってなどいられませんでした。
しかし、じ~さんの足は止まっていたのです。
後ろ姿でもやせ細っているとわかるほどの、狼の、いえ、みーちゃんの後頭部がじ~さんの目に映っていました。