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狼になりたい羊と羊になりたい狼
文フリ短編小説賞2参加作品です。
期間内に完結できるように頑張ります。
その羊は強くなりたいと願っていました。
いつもいつもいじめられてしまう羊です。
いつしか羊は狼になりたいと願いました。
羊は狼の皮を被ります。
「僕をいじめないで。僕は狼みたいに強くなるんだ」
そんな願いを握り締めて。
あるところに羊と仲良くなりたい狼がいました。
その狼はいつもひとりでした。
「どうして羊なんかと仲良くなりたいんだ」
ある狼が声をかけます。
「そんなだから、お前はいつもひとりなんだよ」
他の狼も声をかけます。
「私はかわいい羊さんが好きなの。だから、仲良くなりたいだけ」
鋭い牙がキラリと光りました。声をかけた狼たちは顔を見合わせます。
「お前はやっぱり変わり者だ」
声をかけてきた狼たちは、あははと笑いました。
変わり者と言われた狼はそっぽを向き駆け出します。仲良くなりたい羊の群れに、今日もまた。
「きゃ~、狼がきた!」
羊たちは一目散に逃げていきます。
変わり者と言われた狼は、いつしか羊の皮を被りました。