少年の姿
転生。それは死んでから別の世界に存在を写す事。
だがイメージ的に、転生する姿とか選べないものだと思っていた。
ゲームでも主人公の容姿が変えられないものが多いし、人じゃなくて魔物とか、妖精とかに転生したって言う物語だってある。
だからこうして同じ人間として転生できたことは喜ばしいことだ。
というより転生できてること事態奇跡だ。
男に転生したからといって、文句は言えない。
そんなことを考えながら、俺は熱いシャワーを浴びていた。
ふぅ、ようやくスッキリした…ずっと変な汗をかき続けていたし、これでようやく落ち着いて考え事ができるってもんだ。
頭からお湯をかぶりながら、自分の手を握ったり離したりを繰り返し体の動きを確かめる。
違和感なく動かせる辺り、この体は自分のもので間違いないのだろう。
転生して性別が男になってしまったことは、まぁ仕方がない。
女としてのプライドやらあったけれど、元々男勝りな残念オジサン女だ。
色気のいの字もなかったのだから、男になったからといってそこまでひどく落胆はない。
オネェみたいになるかと思ったが、むしろ余計に男らしくなったようには思う。
ここまで馴染めてる辺りほんとに前世は女か?って自問自答してしまった。
今ではすっかり、一人称が私から俺に変わってきている辺り、男としての素質があったのかもしれない。
さて、シャワー室に案内されてということで、念願の自分とのご対面。その第一印象は…うん、汚いだ。
いやはや、さっきのおっさんが野良犬と比喩していたが、まさにその通りだった。
最初は失礼な...と思ったが、本当に野良犬みたいだったから言われても仕方ないだろう。
ルリちゃん、だったか。よく嫌がらずに案内してくれたものだ。それくらい、汚れていた。
考えてみれば当たり前なのだ。
だって俺、森の中にずーっといたんだから。
地面に倒れていたから身体中泥だらけだし、ずっと火の側にいたから汗もかいている。
そのせいで少しやけどはしていたが、手当てしてもらってたみたいで、今はそれほど痛くはない。
つまり…汚れていないわけがないんだ。
そんなわけで汚れた容姿の方だが、やはり東洋人ではなかった。
子供のためまだ丸みを帯びた顔面に、少し細い黄瞳。肌の色はすこーしだけ黒い。
日焼けしてるというより、持の色だろう。
元日本人の俺としては、目が黄色になってるだけでもテンションは上がりぎみだ。
髪は黒くボサボサに耳上くらいまで伸びている。
決して長いと言うわけではないのだな…既に鬱陶しいと感じている自分がいる。
シャワー室が日本の風呂場のようにトイレと風呂が沸かれていたのには驚いた。
ジャグジーとシャワー、それに石鹸などを置く棚などは西洋品そのままで、なんというか映画で出てくる西洋の風呂を簡易にしたような感じだった。
残念ながらサイズは成人用のため、鏡などの位置は高い。
俺は仕方なく子供用の台に乗って現在シャワーを浴びているわけだ。
目の前に鏡と、少し上のほうにカミソリも見つけたが、届くわけもない。
子供にさわらせないためだろう。これでは頭は剃れないな。
ちょっと髪が鬱陶しく感じたから、剃りたかったのだが…。
とまぁ、冗談はこのくらいにしておこう。
シャワーを浴びただけで丸坊主になっていたら、おっさんも驚いてしまうだろうしな。
小綺麗になったところで、俺はもう一度、鏡を見つめた。