一時の安らぎ
オフフロード車は俺たちの乗っていたものよりも大きく、迷彩柄のシートが備え付けられていた。
今はくくりつけられて纏められてもとのグレーのシートが被せられているが、必要となったら森などのカモフラージュに使うのだろうな。
映画でしか見たことなかったが、まさかこんなところで御目にかかるとは。
武器などもたんまり詰め込まれている。あれだ、映画とゲームでよくみる機関銃の数々。すごいな、こんなにあるのか。
子供に触れさせないよう、武器のつまれた場所の近くに先生が座り、俺たちは運転席側の荷台奥へと身を寄せるように座った。
俺も自分のことで手いっぱいだったから仕方がないが、よく見ると子供達の顔色が悪い。
そりゃそうか、楽しみにしていた外出がゾンビとのデスレースになって、銃撃戦にも巻き込まれ、友達が食い殺されそうになっていたのだ。トラウマにもなるよな。
皆沈んだように黙って元気がない。こんな時、なにかないかな...。子供たちを元気付けられるようなもの。
俺は辺りを見渡してみる。俺たちの回りに武器はなく、非常食やら備品類が木箱に詰め込まれて、積み上げられていた。
この中になにかないだろうか?箱のラベルを見ながら俺は一つの木箱に目が止まる。
廃棄処分とかかれた木箱があった。少しだけ中を覗くと、中には古びて破れたら地図や空ビンなどのごみだ。
「こらバル。勝手にさわるなよ?」
俺が勝手にはこの中身を見ていたので、先生が軽く俺を咎めた。軽く返事をして木箱の蓋を閉める前に破れた地図の切れ端を引っ張り出し、何事もなかったように蓋を閉めた。
俺の行動に沈んだ様子のまま、子供たちが首をかしげている。俺はそんな子供達のなかに混じってまた座り込んだ。
「なにやってるんだ?」
クリスがようやく口を開くが、いつものバカがつくほどの元気のよい声はない。何処か力ない。
「まぁ、見ててくれよ」
見てて、というより聞いてて、なんだけどな。内心そう思いながら俺はさっき引っ張り出した地図を手に取った。
汚れて使い物にならない地図の切れ端を、手で正方形に整える。地図がほしかったのではなく、紙がほしかったのだ。
出来ればもう少し薄い紙がほしかったが、有るだけありがたいので文句は言えない。
正方形に整えた地図の欠片を今度は真ん中で折り立たんで長方形にする。それを人差し指と中指の間に挟み長さを見る。折口の端を持って挟むと少し長い。
指に引っ掻けやすいよう折口の両端をそれぞれ折り、上から見ると凸の形ににているものを作る。正確には三角コーンみたいだな、上から見ると。
準備ができたところで、俺は長方形になっていた地図の欠片の真ん中を少し破く。真ん中に空気の通り道ができた。
さて、うまくいくだろうか。なにせやってたのは俺が6つ位のときだっからな。ほとんどフィーリングだ。
内心不安になりながら、俺は指の間に挟んだ紙を口にあて、息を吹き掛ける。掠れた音しか聞こえず、一度口を離した。
やはり、うまくいかないか。
子供たちの何やってんだこいつ、見たいた視線を感じながら、紙の微調整をする。
実はこれ、紙笛なのだ。草ではうまくいかなかったが、小さい頃学校の先生に教えてもらった紙遊びの一つ。
確かコツは、口をブルブル鳴らすように動かしながら吹くことだったような...そう、唾が飛ぶからやめなさいとかよく言われたあれだ。あれをやる感じで吹けばよかったはず。
後でわかったことだが、さっきいった唇をブルブルさせるブレス方法は、トランペットやらを吹くときと同じらしい。
だからあれが出来ないとうまく楽器が吹けないとも聞いたことがあったから、あれと同じ要領で吹けば音がなるはずだ。
先程いれた切れ込みは紙を振動させる部分だから、きっと切り込みが甘かったのだ。もう少し破いて切り込みを大きくして、もう一度息を吹き掛ける。
"ブーーッ"
紙から出ているとは思えない重ための音が響く。目の前に楽器なんてないのに、紙で音が出たことに子供たちも驚いたのか目を丸く開いた。
出だしは悪かったが掴みはいいようだ。割りと大きな音が出たから、皆の視線が此方に向いた。
よしよし、うまくいったぞ!
どんよりした車内を明るくする作戦をいよいよ結構してやろう!




