敵の正体
"パラウスの生体観察結果"
そう記された紙の束...いや、報告書を開くと、そこにはおぞましいゾンビの姿が写し出されていた。
俺はあまりに突然に、やつらの姿をまた拝むことになり、硬直してしまく。
なんだ、これ。パラウスって、ゾンビの総称なのか?それともやつらと関係あるなにかなのか?
様々な憶測が頭を巡り、思考が止まる。
時間が止まったような感覚に陥ったが、音を立てて報告書が落ちたことで我へと返った。
しまった、あまりに唐突すぎてフリーズしてしまった。いけないけいない。
これは、またにないチャンスだ。
大人に聞いても、絶対に教えてはくれないだろうやつらの生体。またはそのヒントが、これには記されているかも知れない。
なんでこんなのが先生の本棚の隙間に挟まっていたかは謎だが、もしかしたらゾンビ退治の時に調べたのかもしれない。
だとすれば、この情報はかなり信憑性の高いものになる。報告書っぽいし、嘘はない…だろう。
床に落ちた報告書を拾い上げ、埃を払う。
いざ、読もうと思ったがなかなか手が進まない。理由?そんなのさっきの写真だ。
暗い写真だったが、人間が生きたまま食われている瞬間だぞ?しかも食ってるのが動物じゃなくて腐った人間。
見えてはいけない、モザイク級のなにかも写っていたし、見たいとは思えない。
できれば見たくない、切実に!!
しかしいつまでもこうしていても、前には進めない。
外に出るのだって、一歩踏み出せれば簡単だっただろ!今回だって、きっと大丈夫っ!見慣れればなんてことないはずだ。
深呼吸してから、ページをめくった。
先程見たページが広がる。
大見出しには
"パラウスの生体"
と記され、その下に少し太い字で
"パラウスの基本行動"
と記されている。うん、とても読みやすい。あまりまじまじとみたくはない内容だが、仕方はない。
1ページの半分くらいは、よく解らない数式で埋められていた。いや方程式か?理解できないので、読めるところだけ読もう。
"パラウスが血液、または体液感染により体内へ侵入すると、たちまち増殖。被験者たちの殆どは1時間もたたず、腐敗が始まった。
これは、パラウスが増殖した際、宿主の細胞に寄生、視神経を掌握し細胞分裂を過剰に行うゆえに蛋白質が分解されて起こる、パラウスの増殖反応によるものと推測される"
........。
マジで吐きそうなことがつらつらと並べられている。ちょっと待て、普通に人間腐ってますよって書いてるぞこれ。
それも感染一時間も絶たずって。すぐじゃないのかよ。ゲームでは速攻感染するぞ!?
つまり、このパラウスっていうウィルス(?)に感染すると、神経を乗っ取られて細胞が過剰分裂し過ぎて腐るってこと、らしい…。
人間の体を分裂と言う行為で熟させてるみたいだ。
そういや腐敗って、微生物がタンパク質を食ってるのが関係してるんだよな...これもそんな感じか?
"感染後一時間半にはパラウスの核が形成され、それにともない腐敗した細胞が成形時に使用され、宿主の生命が完全に絶たれる。
生存確率はゼロに等しく、核形成後はほとんどの生命の生存が絶望的と言う結果となった。
また細胞分裂からの核形成は、人間本来の繁殖行動に似ており、この事からパラウスは、ウィルス型生命体と断定できる。
しかし自身の細胞を分裂、形成できないため宿主から離れた場合の生存は半日と満たない"
....。
えっと、なんだ。スケールがでかすぎるぞ。
ゲームなんかじゃ感染してはい終わり!って感じなんだが。
すごーく簡単に言うと、このパラウスさんは人様の細胞を使って自分を作り出してるってことか?
でも人様の細胞だから、そいつから離れると半日で死ぬ、か。なるほど。
"核形成後は新たな細胞を求め多細胞生物を襲う行動へと移る。その行動は極めて単純で獰猛である。
実験により単細胞生物、多細胞生物を与えたが、多細胞生物の捕食を行い始めたことから、細胞情報の多い生物を特に襲う傾向にある。
これにより、一番確率の高い生物は人間、取り分け若い子供を集中して襲うことが確認された"
ん.........?
ページの最後に、聞きたくなかった真実が記されていたぞ。おいおい、待てよ...
【子供が狙われる】
.....は?
ふざけんなよっ!?俺今餓鬼だろっ!?
好きで餓鬼に生まれた訳じゃねぇし、元々は引きこもりがちな冴えない女だ!
転生物語って、大抵はファンタジーの世界に飛ばされて、魔法が使えたり剣士になったり、そしてきれいなお嫁さんもらって幸せになるのが王道だろ!
何で俺だけゾンビだらけの世界に飛ばされて、しかもなにもできない餓鬼の姿なんだよ!
しかも狙われやすいってステータスつきで!!
ステータスって言うかデバフじゃねーか!!
....という考えが一瞬でよぎるほど、衝撃的な事実を突きつけられた。
つまりあれか、俺が森で生き残ったのって、本当に奇跡だったんだな。
あんなにゾンビが群がってきたのも、俺が子供だったからか。
つまりあと数年はゾンビに襲われる確率が非常に高いってことか。
...1ページ目でとんでもない収穫だったが、まだページが残っている。
正直もうお腹いっぱいなんだよな...。
しかし、ここで諦めてしまってはきっと後で後悔する。
せめて後悔するなら、読んでからにしよう。
俺は決意を固め、次のページを開いた。




