Act.1-01
宏樹と電話で話をした翌日、朋也は一週間後に三連休の希望を出した。
ちょうど来月度の休みの申請が出来るようになっていたから、本当に良いタイミングだった。
ただ、あまり自ら連休の希望を出さないだけに、周りからは、いったい何があったのかと不思議に思われた。
ことに充に至っては、『泊まりでデートかよ?』と下司な詮索をしてくるものだから、突っぱねるのに苦労した。
否定すればするほど勘違いされてしまうから、なおさら。
何はともあれ、一週間後は予定通り、実家に帰ることにした。
宏樹にはあらかじめ話していたから、両親にも伝わっているかもしれない。
その代わり、紫織には口外しないようにしてもらっている。
とはいえ、宏樹が黙っていても、母親が紫織と逢った時によけいなことを言わないとは限らない。
その時はもう、諦めるほかないだろう。
マイカーを持っていない朋也は、電車に乗って実家の最寄り駅へと向かう。
所要時間は一時間とちょっと。
県内とはいえ、それなりの長旅だ。
それにしても、ずっと実家に戻っていなかっただけに、長いこと電車に乗り続けるのは何とも不思議な心地だった。
就職のために今の職場の寮に向かっている間に同じ景色は眺めていたはずなのに、初めて見るような感覚に陥る。
考えてみたら、あの頃はまだ高校を卒業して間もない頃だったから、自ら決心したとはいえ、ひとりで生活することに不安を覚えていたことは確かだった。
◆◇◆◇
長い時間をかけて電車に揺られ、ようやく最寄り駅に到着した。
珍しいことに、宏樹が車で迎えに来てくれると言っていたので、改札を出てから宏樹の姿を探した。
いや、元々が狭い駅だから探すまでもなかった。
宏樹は、改札から出て来た朋也を見付けるなり、軽く手を上げてきた。
「お疲れさん」
宏樹に改めて労いの言葉をかけられると、変な気持ちだ。
しかも久々だから、正直なところ、宏樹と顔を合わせることに多少の照れ臭さも感じている。
「おう」
軽く挨拶を返した朋也に対し、宏樹は微苦笑を浮かべている。だが、よけいな軽口は叩かず、「そんじゃ行くか」と促してきた。




