表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風 ~四季の想い・第二幕~  作者: 雪原歌乃
第五話 言葉に出来ない
26/48

Act.1-01

 朋也と電話をしたすぐあとは、服装のことなど全く考えていなかった。

 しかし、酔いが醒めた翌日になって、やはり女らしさをアピールしたいと急に思い立ち、当日になって着ていく服を物色し始めた。

 しかも、夜が待ち遠しく思え、時間の流れがいつになく遅く感じてソワソワする。


 こんな涼香を見たら、紫織はどう思うだろう。

 もしかしたら、『涼香可愛い』などと言いながら楽しそうにケラケラ笑うに違いない。

 馬鹿にする、というより、素直に涼香が〈女〉になっている姿を喜ぶ。

 紫織はそういう人間だ。


 だが、姉と妹は絶対に違う。

 紫織と違い、あからさまに面白がり、揚げ句の果てにはデートの相手を確かめてやろうと躍起になる。

 色んな意味で恐ろしい姉妹だから、親に頭を下げてまで一人暮らしを始めて良かったとつくづく思う。


「それにしても、これって変に気合入り過ぎて変に思われないかな……?」


 涼香はひとりごちながら、全身鏡で今の自分の格好を改めて見つめる。

 仕事の時はともかく、普段は進んでスカートを穿くことがない。

 だが、せっかくだからと滅多に着ることのない、黒地に白い花柄があしらわれたワンピースを引っ張り出したものの、いかにも〈私、すっごく張りきっちゃってます〉感が出ていて、やっぱりこれはどうなのだろうかと思い直してしまう。

 かと言って、いつものような白シャツとジーンズだとあまりにもラフ過ぎて、それも違うのでは、と思ってしまう。


 こんな時、紫織がいたらどう言ってくれるかと考える。


「やっぱ紫織だったら、こっちがいいって強く主張してくるな……」


 考え抜いた末、紫織が出すであろう意見を尊重しようと決めた。

 自分で結論を出したというのが恥ずかしいから、勝手にこの場にいない紫織をダシにしたようなものだが。


「私だって女なのよ、うん!」


 鏡の向こうの自分に強く言い聞かせ、何度も頷いて見せる。

 よくよく自分の姿を見てみれば、ワンピース姿も決して悪くない。

 膝が隠れるか隠れないかのギリギリの長さだから、脚もいつもよりも長く見える。

 私もそこそこ見られるじゃない、と思ってしまう辺り、結構なナルシストなのかもしれないと涼香は自分で呆れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ