最近の女神ってこんな適当だったのか
「う…ん…」
気がつくと、俺は真っ白な空間に居た。
「ここは何処だ…?」
辺りを見回すも真っ白い空間が延々と続いている。
「ちょっ…誰か居ませんか!?」
俺は大声で叫んだ。
「五月蝿いな…静かにして?集中出来ない…」
「あ、ごめんなさい」
……って。
「うわぁぁ!?」
いつの間にか俺の隣には熱心にスマホゲーをしている女の子が居た。
「…ん?あぁ…忘れてた」
めんどくさいな…女の子はそう呟くとスマホをしまう。
そして、俺に視線を合わせた。
「こんにちは!さ迷える魂さん!」
……は??
「私はヴェンガル!女神だよ!貴方は本来死ぬ予定では無かったんですが、なんか死んじゃったらしいです(笑)だから今から貴方を冥界にぶち込…送る手続きをしているんです。」
…。
「……」
謎の沈黙が訪れる。
「…なんか言えよ」
「いや言えるかぁぁ!!」
突っ込みどころが多すぎて何が何だか分からない…!
「えーー…まじで分かんないの?面倒だな…じゃ、面倒だけど一から説明してあげるよ」
…と、余程女神とは思えない台詞を吐いた彼女はめんどそうに溜息をした後、説明してくれた。
「単刀直入に言うけど、貴方死んでますよ?」
「本当に単刀直入だな!?」
「えへへ♪」
あぁ…俺にとっての女神のイメージが崩れていく…。
「覚えてますよね?地面にダイヤ的な何かが落ちてたのを」
「ダイヤ的な何か…?」
俺は思い出す。確か死ぬ前に拾った物だ。
「それ私のだから返してくださらない事?」
そう言って右手を俺の顔に差し出す。
「え…っ、あぁ、もしかしてこれかな」
俺はポケットを探ると何かが入っていた。取り出すと案の定ダイヤ的な何かが出てきた。俺はそれをヴェンガルに見せる。
「あー、それそれ」
ヴェンガルは俺の手から奪うように荒々しくダイヤ的な何かを回収する。
「良かったぁ…これ暇つぶしとしてわざと落としてみたんだけど、虹で作ってみたらわりと上手く出来たから取り戻したかったんだ」
「え…わざと落とした??」
「当然でしょ?だって暇だったんだもん」
今、俺にとっての女神のイメージが完全に崩れ去った…。
「で…その後巨大な岩?が落ちてきて、そこから…」
「おうふwとか言って圧死してたわね、これも暇つぶしにやってみたけんだど、君運悪かったねぇ」
「ちょっと待てよ!?わざとそのダイヤを落として」
「…ダイヤ的な何か」
ドヤ顔で俺の話を訂正するヴェンガル。
「どっちでもいいだろ!?」
「……」
「…んで、そのダイヤを拾った俺の頭上に」
「ダイヤ的な何か」
ヴェンガルは俺を睨んできた。
「だーっ!!もう分かったよ!!そのダイヤ的な何かを拾った俺の頭上に」
「最初から宜しく(ゲス顔)」
「……(このゆとり女神め…)」
「何か言った?」
「いや、別に。…えーと、ダイヤ的な何かを拾った時、俺の頭上に岩みたいなのが降ってきて圧死された、と…そしてそれは全部ヴェンガルが落とした物だ、と…。」
「大ー正ー解ー」
「ヴェンガル…そろそろ話し方固定しなよ」
「何それ?」
俺は面倒なのでスルーして続ける。
「俺、死んだんじゃなくて殺されたんじゃね?ヴェンガル、あんたに…」
…………。
「…ちょっとトイレ行ってき…」
「いや待てええええぇ!!」
「あー…そうですよ、確かに殺しましたよ…というのは少し違うかな。貴方は選ばれたんですよ」
「選ばれた…?」
「はい、私は長ーい事女神をしてるんですが、地球に居るニートという職業の方と変わらないくらいやる事が無く暇なのでね…数万年に1度、こうやって一旦1人の人間を殺すのです。」
ヴェンガルは淡々と色々とダメな事を言っている…。
「その恒例行事に当選した貴方には!異世界にご案内致します!」
……はぁ!?
「意味がわからねぇよ!?異世界で生きろと?」
「貴方に仕事を与えます!」
「いや人の話聞けよ!?」
「この仕事をクリアさえすれば、貴方は無事に元の下界へ帰れますよー」
俺の話を全て聞き流す…凄いスルースキル持ちだ…。
「無事に…って、殺したのはあんただけどな…まぁいいや、仕事とは?」
その直後、右腕に何かが装着された。
「なにこれ…腕時計?」
「異世界へご案内致しますのですが、異世界へは眠っている間しか突入出来ません!そして突入できる時間にも制限があります、7時間です!」
見れば時計は「ノコリ7:00:00:00」と表示されている。
「それを進めると…」
時計のカウントは自動的に減っていき、0分へ近づく。
「そのカウントが0になった時、1日の異世界での活動は強制終了され、翌日へ持ち越されます。終了後は下界での生活を夜まで過ごして頂き、寝てからまた異世界カウントが減ります。これの繰り返しで世界を救えれば貴方の勝ちです、もし異世界で死んでしまった場合は…」
「冥界行き、か…」
「おぉ、察しが良いですね!」
「って、それつまり俺の人生かかってんじゃん!?」
「東禅です!…じゃなくて当然です!打ち間違えちゃい(ry」
「おいメタ発言!?ってかどこ行くんだよ!?」
「そろそろ一旦お別れの時間ですーごきげんよう」
「ちょっ待ち…」
俺の意識は眠りへと落ちていった…。